木葉

名もなき野良犬の輪舞の木葉のレビュー・感想・評価

名もなき野良犬の輪舞(2016年製作の映画)
4.2
抗えない闇に生きる中で一筋の光となる存在に出会えたとしたら。
冒頭のシーンからビクッとなり、ストーリー自体は既視感があるのに、何より俳優陣の熱量に呑み込まれて、どんでん返しの連続、時間軸を入れ換えるストーリーテリングに、あっと驚かされるばかりだった。
韓国ノワールは素晴らしい、孤狼の血なんて目じゃないわと思ってしまうくらいの迫力が主演のソルギョングとイムシワンにはあった。とにかく二人の魅力が爆発している。
巨大犯罪組織でナンバーワンに成り上がりたいが今は刑務所にいるソルギョング演じるジェホと、刑務所へ潜入捜査で入って来たイムシワン演じる若き優秀な警官ヒョンスの駆け引きが息もつかせぬぐらいに緊迫していて素晴らしい。
二人の心理戦、変わっていく関係性に騙されながらもウルウルきてしまった。
二人の男には会った時から、糸のようなものがあり、たぐり寄せ、お互いがこの灰色の世界、どす黒い人生の中で、生きていくのに必要な存在であったのだ。
二人の互いを全て知った上で思いやる心、一生あるうちでなかなか出会えない、唯一無二のかけがえのない存在となっていく中で、思わぬ真実に辿り着いた時、二人の関係性は、意外な結末に向かっていくことへなるのだ。
その巧妙な語り口、ジェホとヒョンス、二人の男の哀しき愛の物語に、
どうしようもない深い闇に、足が竦み、心震えて、
ラストの虚無感と恍惚感は今でも忘れられない。
上半期ベスト3を挙げるのなら、名もなき野良犬の輪舞とスリービルボードを挙げたい。
木葉

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