真世紀

方舟の女たちの真世紀のレビュー・感想・評価

方舟の女たち(2016年製作の映画)
3.9
OPフェス自分的通算四日目は城定秀夫監督の旧作「方舟の女たち」から。同じ満員電車の中、痴漢に遇う三人の女。流されがちなメガネ司書、高嶺の花気取りの銀行員、痴漢逮捕に熱意を燃やす女刑事。それぞれに話が展開しつつ、接点がどこで生まれるのか、伝説の痴漢サソリかと思いきや!こうきたかー。

司書の君子(竹内真琴)、自己肯定感が低く、後輩ヤンキー職員(しじみ)にはなめられ、断れないままに館長とは不倫関係に。発覚後も問い詰める館長妻に逆に憐れみ混じりの同情を受ける始末。司書だが、読み通せた本は三毛猫ホームズのみという彼女が自らの意思で行動したのは、というのが最初のパート。

さらに銀行員麻美(希島あいり)の絵に描いたような転落劇、逃れる痴漢を街頭まで追跡するのもお手のものの涼子(松井理子)が自分に手を出したサソリ(守屋文雄)を遂に捕らえ、手錠をはめるもという話がリンクしていく心地よさ。構成力はさすが。そして、ここまで来ると逆にうらやましいわ、麻木貴仁さん!

音楽、スタンダードな楽曲を作中に用いて、そして、印象深いのが特徴の城定作品だけど、サソリを追って再び電車内に飛び込んだ涼子がというシーンで、まさかこれが流れてくるかというのも今日の驚きでした。確かにそりゃ、スタンダードだけどさ。フェリーニ監督の「サテリコン」か!とつっこみかける。

女司書が作中、朗読するのが太宰治『女生徒』だったり、銀行員に絡むホームレスが指でフレーム作ってみたり、黒澤明関連の書籍読んでいて、元映画関係者(というか、その仕草から故 大林宣彦監督思い出したな)匂わせたり、細部も色々と豊かなんだよな。そして、もちろん、エロさも。今日も感嘆の城定作品でした。
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