サムカワ

累 かさねのサムカワのレビュー・感想・評価

累 かさね(2018年製作の映画)
4.6
「演技指導……ですか?」


もん……っのすっっっっごい映画を観ましたよ!!

泣いた!とか、感動した!!とかとは違った、何か形容しがたいパワーをぶつけられた、そんな感じです。




まずもう誰の目にも明らかですが、土屋太鳳さん、芳根京子さんの圧巻の入れ替わり演技の背筋も凍る完ぺきさ!!

入れ替わり中にすごく傷ついて、入れ替わり解除後もそのテンションのまま夜一人泣く……
みたいなシーンだって、演じてるの芳根京子さんから土屋太鳳さんへと変わっているのに、映像に映っているのは完全に「丹沢ニナ」で、もうこの多層構造にクラックラさせられました……



また、映像演技内で舞台演技をするという意味での多層構造もあり、
顔を入れ替えたという設定のため、役者は本当の自分の演じる役とは違う役を演じ、その役が演じる舞台の演技を演じるわけですからね。
自分でも何言ってるかわからなくなってきましたよ。

またさらに、その舞台演技の演技力で客が感動する…というものを映画の中で表現して、この映画を観ているお客さんにもそれを追体験させなければならない……
という気が遠くなるほどのハードルの高い設定!!


要するに
●一人二役を演じる役者が2人
●映画内で舞台を作る
●その舞台を映画越しに観た人にも感動させる
というインポッシブルすぎるミッションが、この映画にはのしかかっているのです!!


そして、結果として、僕にはこれらすべてが成功していると思いました!


もう頭では追いつけないですよ。
映画を観ていて、もう肌が唸るといいますか、なんかもうよくわかんないです。


また、物語的な転換点も最高でした。
時制が一気にポンと飛んだあとの展開は、今までの展開では想像もつかないところに感情移入して、辛くて涙が出ました……。
あの"ゲスト"が出てくる展開、苦しいッ!






もうとにかく役者陣が凄まじいすぎますね。

土屋太鳳さんは、絶世の美女という設定に説得力がありまくる!
累の闇を内包した吸い込まれるような魅力、色気……たまらんす。

ぼ、僕も「演技指導……ですか?」って言われたい!!

「サロメ」を演じきるパフォーマンス力もさることながら、妖艶さがあり得ないほど溢れ出ていて、映画であることを忘れて、ずっとサロメを観ていたい!
と思わされました。


芳根京子さんは僕は瞳が最高だと思いました。
黒くてまん丸なあの瞳から、過去の恨みつらみ、劣等感の奥行きがドバーッとこっち側の心に流し込まれるかのような、
例えるなら「ロード・オブ・ザ・リング」の指輪のような……

いや良い例えじゃない。忘れてください(じゃあ消せよ)


あと檀れいさんの登場シーンのホラー感 最高ですね。マジで怖いっす。


浅野忠信さんはもう言わずもがなですね。大好きです。






ただ、僕テッキリ 累ちゃんは顔に傷があるから子供の頃からまわりにイジメられてたのかと思ってたんすけど、違うんですね。
普通にむちゃくちゃ可愛いのに、傷無しで「ブス!」って言われる意味がわからん……ってか傷がある顔だから劣等感を抱えてたはずなのに…なんかそこブレてないすか??



あと若干 モノローグが多いな〜とか、おきまりのパターンでお客さん的には次何が起きるかわかってるところでも、へんにもったいぶるな〜とか、色々細かいところがノイズになったりはしました。


何よりクライマックスの屋上のシーン。
せっかく舞台と映画というギャップを出してるのに、屋上での会話が感情を爆発させて叫び、怒鳴りあう…っていう大仰なトーンになっていたのがすごく気になりました。

また、あるトリックの種明かしも、伏線も何もなしに、セリフで説明する、完全な後出しジャンケンになっていたのもどうなのかな〜と。




ただ、舞台での凄まじさを映画的演出のスパイスで、しっかり"映画的見せ場"に昇華させてみせたラストがもうこの映画の全てと言っても過言ではないと思うので、
もう色んな人にオススメしたいと思います。

真っ暗表現、照明による表情の変化等々、劇場で観ないと絶対に損する描写多数です!

最高でした!!
サムカワ

サムカワ