TAK44マグナム

ハッピー・デス・デイのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ハッピー・デス・デイ(2017年製作の映画)
3.8
ずっと、ずっと殺される。


あのゾンビコメディの快作「ゾンビーワールドへようこそ」のクリストファー・ランドンによるタイムループ・スリラー。
2017年の作品が、ようやく日本でも公開されました。
続編も連続公開される予定です。
二本貯まらないと公開できんのか?(苦笑)


女子大生のツリー(ジェシカ・ローテ)が誕生日に起きると、そこは見知らぬベッドであった。
どうやら同級生のカーターの部屋に泊まってしまったらしい。
急いで自室に戻り、講義に出たツリーは、その足で不倫相手が待つ病院へ向かった。
夜は夜でパーティがあったが、道中で不可思議なことに遭遇する。
道端に誕生日ケーキが置かれていたのだ。
何の冗談なのかとケーキを見やるツリーの背後に、ベビーマスクを被った不審者が近づいていた。
ナイフを持ったベビーマスクは、ツリーを殺しにきたのだ。
殺されたはずのツリーが目を覚ますと、そこはまたもやカーターのベッド。
しかも、誕生日の朝であった。
不思議がりながらも一日を過ごしたツリーであったが、またもや夜になると殺されてしまう。
そして同じ朝がくる。
「ループしている!」
そう気付いたツリーは、必死にループから抜け出そうとするが、脱出するためには殺人鬼の正体を暴き、殺されるのを防がなければならない。
カーターの協力も得て、ついに反撃を開始するツリーであったのだが・・・


なかなか面白いですね!
ループものって既に手垢がついたネタだと思うのですが、楽しい映画に仕上がっています。
特に低予算のSFやスリラーだとループネタが採用される傾向にあるんじゃないでしょうか。
同じ一日を繰り返すので、撮影を工夫すれば同じシチュエーションは連続で撮れるし、尺の割には登場人物や小道具や衣装の数を抑えられるような気がします。
もしかしたら余計に大変な要素があるのかもしれませんが、壮大な話にでもしない限り、例えば1つの部屋だけでも話が成り立つので、お金をかけずにアイデア次第で良作が出来上がりそうです。
「トライアングル」や「パラドクス」など、何作かループものを観てきましたが、どれも大金をかけたというよりもアイデアと工夫で成り立っている良作でした。
本作も予算規模は知りませんが、観てみると同じ感じを受けましたよ。

中盤の、誰が犯人なのか疑わしい人物を探すくだりが一番コメディしているパートになります。
「ララランド」のジェシカ・ローテのコメディエンヌぶりもハマっていますが、シリアスな部分と比べると短いので、コメディ成分は思ったよりも少なめです。
(シリアスな部分も笑えますが)

ツリーは、ある理由もあって結構なアバズレを装っています。
なので、はじめの方は主人公でありながら好きになれないタイプです。
それが、ループを繰り返すうちに、そんな自分自身がループの原因なのではないかと思い始めます。
心を改め、素の自分に戻ろうとするツリー。
ここが些か性急で、観る人によっては自分勝手さはそのままのようにも見えてしまうかもしれません。
ただ、じっくりと描くのもホラーコメディというジャンルの性質上、難しいでしょうね。
ノリの良さやテンポも大事にしないと切れ味が鈍りますから。
幸いにもツリーは、たんなるアバズレではなく、元々は両親とも仲良く、一度男に助けられたらすぐに惚れてしまうような純真無垢な女子なので、「あ〜、改心したんだな」とギリギリ納得できはしました。
ちょっと、パパッと変わりすぎだったけれど(苦笑)

気になったのはそのぐらい。
ホラーとして観ると全然怖さがないので食い足りませんが、変に枝葉を広げずに、ツリーvs殺人鬼に話を絞っているのは正解でしょう。
大概、スラッシャーホラーにおいてはビッチ系の登場人物は殺され役と決まっていますが、ツリーが改心すると途端にファイナルガールに役柄が変わってゆくわけでして、一風変わっていながら意外とスラッシャーの基本に忠実だったりするのです。

あとは話の核となるミステリー要素ですけれど、真犯人については誰もがうっすらと怪しいと思うんじゃないかな?
最初から怪しいとにらんでいたら、そのまんまでしたよ。
でも、ミステリー要素はオマケみたいなものなので、そこは分かりやすくて逆に良かったんじゃないかと思います。
この映画にインテリを気取った複雑さは必要ないし、ラスト付近は勢いで押し切っていて清々しかったぐらいです。
どうしてループしたのかはサッパリ分かりませんが、続編で判明するのでしょうか?

余談ですが、殺人鬼が被るベビーマスクのデザイナーは、「スクリーム」のゴーストフェイスと同じトニー・ガードナー。
ダフトパンクのロボットみたいなマスクのデザインもこの人です。
特殊メイクとして「チャイルドプレイ」シリーズや「ダークマン」などにも参加していますね。

また、何度もツリーが目覚める事となるカーターの部屋には「ゼイリブ」のポスターが貼ってあります。「全てを疑え」というメッセージなのか?
監督が本作を撮るうえで参考にした作品の中にも「ハロウィン」があったりするので(確かに、いきなり後ろにいる、とかマイケル・マイヤーズっぽい)、ジョン・カーペンター好きなのは間違いないでしょう。
そういえば、「ゾンビーワールドへようこそ」に「ハロウィン」の舞台であるハドンフィールドまで65キロと書かれた標識が出てきたり、「要塞警察」じゃないけれど警察署に立て籠もったりする(ほぼ牢屋だったけれど)場面があったりしましたね。
完全にカーペンターオタクじゃないですか(苦笑)
そんなカーペンター大好き監督の実のお父さんは「大草原の小さな家」でも格好いいお父さんだったマイケル・ランドンだったりします。


兎にも角にも、続編も面白そう!
本作の上映後に「ハッピー・デス・デイ・2U」の予告が流れまして、期待を煽る、煽る。
本作以上にキレのある、鮮やかな続編を期待しちゃいますね。
少ない上映館が増えるとは思えないので、何とか都合つけてスクリーンで観たいものですな〜!


劇場(TOHOシネマズららぽーと横浜)にて