2049年のジャレッド・レトが思ってたよりもあまり活躍しなかったので、ここは2092年のジャレッド・レトを。
ジャコ・ヴァン・ドルマル監督が幾通りものパラレルワールドを展開させてゆくSF作品「MR.NOBODY」
科学が発達した2092年の地球では、人類で唯一寿命を持つ118歳の男ニモ・ノーバディがいよいよ臨終の時を迎えようとしている。
謎に包まれた彼の記憶を呼び起こした時、彼の口から一体どんな人生が語られるのか？
老人が過去の出来事を辿るプロットはドルマル監督の名を一躍世界に知らしめた代表作「トト・ザ・ヒーロー」でも採用されていますが、
本作ではニモに起こり得たあらゆる可能性が多重層化し、複数のエピソードが入り組みながら同時進行していきます。
9歳の時、離婚した父とイギリスに残るか、それとも母とカナダに行くかという究極の選択を迫られたニモ。
その時ニモの頭の中に浮かんだ何通りもの未来は、老衰前のニモが振り返る過去とリンクし、
時間の概念を無効化してこの物語群を映し出します。
彼はあの時どんな選択をしていたのか。
そして15歳の時、彼が恋に落ちた相手とは3人のうち一体誰なのか。
チェスのゲームのように幾多もの選択の連続によって、あらゆる可能性へと枝分かれしてゆく人生。
そしてそのどれもすべてが、かけがえのない自分の人生。
パラレルの代表作といえば「バタフライ・エフェクト」ですが、
「フォレストガンプ」の羽を想起させる落ち葉だったり、
「ブレードランナー」のユニコーン、
「2001年宇宙の旅」の宇宙船とクラシック、
「ハロルドとモード」の狂言自殺、
「こわれゆく女」の子供たちの前で頑張っちゃうメンヘラ母さんなどなど、
あらゆる映画へのオマージュも見所のひとつ。
そもそもNemo Nobodyとは何者なのか？
それはもちろんNemoであり、私でもあり、あなたでもあり、生まれる前の誰かや死んでいった誰か、そして生まれてこなかった誰かでもある。
この物語の主人公はつまり"Nobody"であり、そして一方では"Anybody"でもあるのです。
ちなみに日本では残念ながら137分のDVD版しかリリースされていませんが、
北米盤Blu-rayは155分に及ぶディレクターズカット版となっています。
ニモの未来予知や同僚ピーターの妻など、細かい演出の復活でより筋書きも明確になっており、特典映像の削除シーンやメイキングも大変見応えがあるのでこちらも一見の価値ありです。
