ジャイロ

桜桃の味のジャイロのレビュー・感想・評価

桜桃の味(1997年製作の映画)
4.3
この人何してるんだ?

知ろうとする。でも分からない。ずっと分からない。何度も何度もドライブするものだから、すっかり荒れ地の道を覚えてしまった。

やがて少しずつ男の目的が見えてくる。するとどうだろう。これまでの全てのことに意味があることに気付く。決して言葉だけではない。それは表情だったり、あるいは会話の間だったり、車窓の風景だったりと、そこに映し出される何か、それがぼんやりとでも分かったような気になると、いつの間にか、のめり込んでいる自分がそこにいた。

頭で理解したり同情はできても心の苦しみは感じ取れない。その苦しみは自分だけのものだ。でも負けるな。挫けるな。人は思っている以上に一人じゃない。

頑なな心に言葉がじんわりと染み込んでいくのがわかる。世界を変えていくのがわかる。この世界のありのままの美しさに気付かされてしまう。

すべてのものは土から生まれ、すべてのものは土に還る。だけどそこには人生があって、悩みがあって、そして救いがある。さくらんぼなのか桑の実なのか、はっきりとは判らぬままに、食べたことすら無い甘い桑の実の味が、口の中いっぱいに広がっていくような気がした。









しかし


ここで終わらないのがキアロスタミ監督。

してやられた

これ、一人で観ただけだと完結しないじゃないか。監督、あなたって人はホントに…