真田ピロシキ

クワイエット・プレイスの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

クワイエット・プレイス(2018年製作の映画)
3.3
ガッカリホラーみたいな声を聞いたことがあってそう言いたくなる気持ちは分かります。サスペンスホラーとして見ると微妙。ステルスゲームでやってろって話になりますよ。私はホラー部分をあまり重要視されていないと感じていたのでツッコミどころとされそうな部分に触れようとは思わない。2018年を表す寓意こそ映画の本分なのだと思う。

音を立てたら即殺にかかるエイリアンが闊歩してるせいで僅かな物音すら立てられない息苦しい世界。声を出せるのはより大きな音がしている時だけ。この設定にそこかしこのーとりわけジャパンでは国民自らが意識的に取り組みたがってそうなー密告監視社会を重ね合わせるのはそんな飛躍した考えではないと思う。エイリアンどもが何も見えず後先考えずにただ音のする方向に向かう愚鈍な連中なのも現実の比喩として通じるものがある。ただそう捉えるとエイリアンって設定に呑み込めない点が生じる。SFホラーとしてのガワを形作るためにとりあえずエイリアンだとしたら安直じゃないですかね。あんなのを大統領にしているアメリカ人の映画なだけに特に。エイリアンの最初の飛来地がメキシコってのも無神経。いやこれはもしかして意識的にやってるのだろうか。

見た直後はそこそこ評価してたのに感想書いてるとだんだん微妙な映画になってきた。でも聴覚障害者の自己肯定を促す映画として作られてる面をかなり感じられたので全否定にはなりません。サイレント映画の感触を目指したという演出は成功してるのか分からなかったが、基本喋らないことによる息苦しさはあるし穀物サイロに沈むシーンでそれは張り詰める。色々な映画を見てるとオーバーラップするものがあって、テーマと演出の奇妙な乖離はシャマランの『サイン』が好きな人には頷けるものかと思う。ジュリアン・ムーアが出ていた『ブラインドネス』もこんな味わいだった気がする。それと2018年公開作品として見逃せないのはエイリアンさんのヴェノムっぷり。見た目似てるし弱点も同じようなものじゃないか。可愛いヴェノム君が恐ろしいワルだという事を思い出させてくれる(笑)

それまでの無力なサバイバルスリラーから一転。殺し方が分かった途端に攻勢に回るラストショットには色々台無しにしてて笑う。エンドクレジットでマイケル・ベイの名前を目にして納得いくのでした。ベイ関連作品らしく続編予定してるらしい。それやったらダメなタイプだろう。