ノラネコの呑んで観るシネマ

四月の永い夢のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

四月の永い夢(2017年製作の映画)
4.3
三年前に亡くなった恋人から届いた手紙が、止まっていた彼女の時間を動かし始める。
手紙そのものがドラマを推進する訳ではなく、主人公の心にずっと引っかかっていた、ある想いに向き合うきっかけを与えるだけ。
90分間、彼女自身にドラマチックな事件はほとんど何も起こらない。
しかし、ずっと蓋をしていた心の奥底から少しずつかき乱され、永遠かに思われた夢から覚めてゆく。
日常的な話だけど、もの凄くエモーショナルで美しい映画的なショットが冒頭を含めていくつかあり、ドキッとさせられる。
国立から富山のロケーション、音響演出もなかなか。
主人公を演じる朝倉あきがいい。
本作を観ると、改めて故・高畑勲監督が彼女をかぐや姫に抜擢した理由が分かる。
この人の声はとても凛としていて、ストレートに観客の心に響くのだ。
喪失と罪悪感がもたらした春の永い微睡みは終わり、リアルな人生が再び始まるまでの物語。