TAK44マグナム

3D彼女 リアルガールのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

3D彼女 リアルガール(2018年製作の映画)
3.6
三次元は難しい?


アニメの魔法少女がイマジナリーフレンドである生粋のオタク男子が美少女に告白されたことから始まる、ファンタジックでスウィーツな(笑)胸キュンラブストーリー。
主演は佐野勇斗と中条あやみ。
共演者は上白石萌歌、三浦貴大、竹内力等。
魔法少女えぞみちの声を担当したのは神田沙也加で、貫禄の魔法少女っぷり。
「〜べさ」が可愛い。
佐野勇斗や上白石萌歌のオタッキーな演技が本当にそれっぽくて巧いので笑いに転化できているし、お話の説得力が増しています。
中条あやみは正直好みの女優さんではないのですが、本作ではキチンと一途で可愛らしかったですね。
また、竹内力がオタクを息子にもった父親役を怪演していて面白かった。
普段は子供でも容赦なくしばき倒すようなヤクザの役ばかりなので、ギャップで笑かしにくるのは反則技です(苦笑)


スーパーオタクだけれど困っている人を見ると放っておけない優しい性格の筒井光は、プール掃除で「ルックスは最高だが性格ブス」と噂される美少女、五十嵐色葉と出会う。
その後、書店で万引き犯に間違われていた色葉のピンチを救った筒井は、なんと色葉から「半年間限定で彼氏になってほしい」と告白されてしまう。
筒井のことを「つっつん」と呼び、半ば強引に彼女になった色葉に対して疑念が晴れない筒井だったが、それでも付き合ううちに噂とは全く違う彼女のことを本当に好きになってゆくのであった。
しかし、夏のキャンプでの色恋沙汰を経たハロウィンパーティで、色葉は突然の別れを切りだす。
納得できない筒井であったが、色葉は消えた。
そして歳月は流れ・・・


前半は完全にコメディのノリ。
オタクがモテるわけがないという前提のもと、それでも真面目で優しい性格であるが故に学校一の美少女を射止めてしまったことから非日常的な騒動に巻き込まれるつっつんの行動で笑いをとりにきます。
これがまた面白い。
つっつんの家に色葉が強引に行った時のつっつん家族の反応とかゲラゲラ笑えました。
いや〜、中条あやみに振り回されたい!
などと、ついつい羨ましくなってしまいましたよ。
しかも上白石萌歌演じる後輩女子にも惚れられるし、さらに衝撃の告白もあったりして、人には三度ぐらいはモテ期がくるとは言いますが凄いモテ期到来だよ!
まぁ、オタク演技とオタクっぽい風貌にしているだけで、つっつんの中の人はジュノンスーパーボーイコンテストの出身者ですけれどね!

兎にも角にも、つっつんが面白い。
脇のキャラたちもフレッシュで宜しい。
予想以上のことは起きませんが、イケメン男子が通常運転でモテまくるわけじゃないのが愉快痛快ですよ。
それにしても、あんなに整理整頓されたオタク部屋ってのも生活感が無さすぎですが、さすがにゴミ屋敷みたいなオタク部屋だったら振られそうだから良かったのか。
オタクも清潔感がないとね!
これ書いてる本人は失格ですが(汗)


で、そんな楽しい前半が過ぎると急に失速してしまうのが本作の難点。
いきなり、ドがつくほど真面目なトーンになってしまい、笑いの要素は完全に封印されてしまいます。
しかも、どこにでも転がっていそうな「よくある話」なので意外性の欠片もない。
原作漫画からして同じ展開なら仕方ないですけれど、それにしたって捻りがなさすぎるので涙を流すほどでは無かったです。
大体、三浦貴大の行動自体が医者の倫理感からしておかしいと思うなぁ。
分かりやすいけれど、あいつがダメ!(苦笑)

せっかく前半で謎めいたキャラクターでもあった色葉の神秘性めいたものを取り払ってしまったのも減点。
すごく陳腐なキャラクターに成り下がってしまい残念でしたよ。

それと、よく意味のわからないハロウィンパーティは何だったのか。
オタク=コスプレからなのかと思ったら、別にアニメのコスプレが登場するわけでもなく、何故か大勢でダンスを踊り狂う。
唐突に別れ話が始まり、ラストでもまた唐突にハロウィンパーティが始まるのは何なのか?
映画的なスケールの広がりを狙ったイメージなのかもしれませんが、完全に滑っているでしょう、これは(汗)
もはや観ていて痛々しかったです。
二次元キャラが勝手に喋りだすような映画なのでハロウィンがどんな演出でもおかしくないとかどうとかの問題ではなくて、要するに何がなんだか分からなくて心に草が生えました(汗)


前半と後半でまったく違うテイストなのはポン・ジュノ監督の「パラサイト/半地下の家族」みたいですが、前半のお笑いはともかく、後半のシリアス劇のレベル差に天と地ほど開きがあって、これならアンハッピーなオタクの恋愛地獄で終わっても、それはそれで印象深い作品になれたんじゃないかとか、勝手気ままに想像してしまった次第。
何にしろ、後半はオタクである必然性がが薄味になってしまったのも、あまり宜しくないと思いました。
オタクであるからこその答えを出して欲しかったなぁ。
「二次元には無くて三次元にはあるもの」をつっつんが悟る場面もいまいちピンとこなくて、そこで思考が停止させられてしまった感が強かったです。
前半は大好きなぶん、非常に惜しい。
結局はスウィーツ映画なので、後味は良かったですけれどね。


アマゾンプライムビデオにて