ryosuke

戦争と平和のryosukeのレビュー・感想・評価

戦争と平和(1965年製作の映画)
3.6
フィルムの退色が進んでいて、終始画面全体が赤色に覆われていたのはちょっと残念。フィルムの状態は知らせといて欲しいなあ。
全体的にかなりテンポが悪い。序盤、シーン始めの状況説明として屋敷の全景を映す際に、ゆっくりとしたオーバーラップで少しづつ屋敷に近づいていった時点で予感はしたが、基本的に遅すぎる。
ドラマの展開の唐突感や、ナポレオン戦争とモスクワを一度明け渡したことによるロシア人の誇りへのダメージがメロドラマとどう結びついているのか、主人公が何故戦場のど真ん中にやって来たのかがよく分からないのは総集編だからなのかな。退色無しでフルバージョンで見たらどうか分からないけど、今回は結構退屈した。多分六時間半だともっとダルい気がするので見返す気力が起きるかな。
「ベン・ハー」等を見たときも思ったけど、この手の歴史大作はスペクタクルは見応えがあってもドラマパートの遅さが気になることが多い。スペクタクルシーン以外あまり見どころを見つけられなかった。
あと、無言の表情に独白が重なる演出多いけどシンプルにダサくないか。
(時折若干唐突な)クローズアップの差し込み、振り向きざまのバストショットをきっかけとした繋ぎ、扉を勢いよく開けての登場と、ヒロインのリュドミラ・サヴェーリエワを鮮烈に見せようとしているのは伝わってくる。
大量の人員を動員して、時に空中に舞い上がるダイナミックなカメラワークで捉えられたスペクタクルシーンは流石に大迫力。特にラストのボロジノの戦いはやはり凄い。時に「砲弾目線」になりながら、戦場の上を滑って行くカメラの迫力、どこまで行くんだという横移動撮影が大作故の視覚的快感を生み出してくれる。画面上から下まで並んだ大砲が、順番にかつ素早く白煙を放出していくショットも印象深い。
直前まで喧騒の中で人々が移動するモスクワを見せておいて、突如空っぽのモスクワを挿入するのもインパクト大。青年の無音の処刑も怖い。静かに首元に被弾する。
主人公に散々壮絶な物を見せておいてのラストのポジティブメッセージは唐突すぎてよく分からんが。いや愛のおかげなんだろうけど。
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