ガンビー教授

スリー・ビルボードのガンビー教授のレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
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善人と悪人の見分けが難しい現代の世界では、当然、正義(復讐)を遂行することも難しい。「何」に対して「何」を行えばよいのか、まさしく混乱のさなか、衝動的な感情が行動を支配する……というすさんだバイオレンス映画にもなりそうなテーマを、人を食ったような演出と展開で見せるブラックなコメディ。

面白い。面白いのだが、何よりまず、次から次へとひねりの利いた技巧(テクニック)を連打してくる脚本が、画面を突き破ってダイレクトに伝わってきて、ちょっとお腹いっぱいに感じるところもあった。作風はまた変わってくるが、例えばフィリップ・カウフマンが脚本を手掛けた映画を見ているときなんかにも通じる感覚で、僕はこれがどうしてもやや口に合わないタイプで……(もちろん、「うまい脚本」の映画すべてが苦手なわけじゃないんですが)。
観客に対して上下左右へ揺さぶりをかけてくるライド感覚は損なわず、仮にこの作品が100分前後で語られていたら、もっと印象は変わっていたかもしれない。もしこの作品がコメディというジャンルに属するものであれば、その短さは適切に機能するはずだと思う。

説明的でないという意味で、幕切れはとても良かった。
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