スプリングス

スリー・ビルボードのスプリングスのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.3
〈/憤怒/〉

【Introduction】
『綺麗な布が織りたかった』
誰に弁解する訳でもないのに、
言葉が口からこぼれ落ちる。
歪な織物を眺めながら。
もうどうにもならない現状で。
──交差し合う無数の糸が。
絡まり、
ほつれ、
結ばれ、
ほどけ、
互いが干渉しあいながら、
大きな布を織り上げていって。
そしてふいに、
破れた...。
はじめはただの小さなほつれだった。
だがそれは日に日に大きく広がり、
繊細なバランスで編み上げられていた布を、
瞬く間に侵食していった。
『プチッ!』
糸が切れて、
切れてしまって取り返しがつかない戻ってこないあの子はもう二度と戻ってこない二度と笑顔を見せない話せない遠い存在になり段々と皆の記憶から消えていつかすっかりそのまま忘れ去られてしまうそんなのは嫌だまだ何も終わっていないのに勝手に終わらせられるのは嫌だ何が終止符だふざけんなクソ野郎が知ったような口ききやがって未解決迷宮入り言うのは簡単だけどそれでいい訳がないだろうがそれなのにみんな忘れよう忘れようとするばかりでほつれから目をそらしてなんでなんでまだ私こんなに苦しいのにみんな笑ってられるのあの子はもっと苦しかったはずなのになんでみんな知らないふりをするのもう興味ないんですかそうですか、、。
──私の世界は歪んだまま。

【Review】
予備知識皆無で観に行った結果メンタルごっそり逝かれました。
これはあれ以来ですねあれ、『ミスティック・リバー』以来のやるせなさ。。
はぁ〜、、(※今年イチのため息)。
なんて言っていいのか...言葉選びが難しいぞこの映画のレビュー。
あれね、最近気づいたことだけど《世の中には完璧な善人もいなければ、完璧な悪人もいない》んだよね。
異常な人間も大抵はそこに至るまでのプロセスがあるものだし、そもそも正常という概念自体が多数による同調圧力によるものだし(※あくまで持論)、だったら100%の善人とか100%の悪人とか、そういうの居ないんじゃないかなって。
今作も(※詳細が描かれていない犯人以外は)悪人でもなければ善人でもないんですよね。放火はするし殴るし窓から投げるし散々だけど、それとは正反対なことも出来る。
それこそが人間らしさってやつなんだなって。
だから、サム・ロックウェル扮するディクソンには心動かさせまくるんですよね。
この映画は完璧なくらい人間を《ありのまま》に描けています。
あまり多くを語らないほうがいいと思うので今回はこれにて。。

【Digression】
『君はひとりじゃない』って言葉、励ましに使われがちだけどこれでかえって追い詰められている人もいると思うんですよね。
今作みたいに人間同士の関わり合いの中で歯車が狂っていっておかしな方向へ、、とかがありますからね。
ひとりでいたい人がひとりになれない社会というのも恐ろしいものです。(※映画とはズレた話題ですがね)