いずみたつや

スリー・ビルボードのいずみたつやのネタバレレビュー・内容・結末

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

面白い!面白すぎる!最低で最高な人々。全登場人物がちゃんと"人として扱われている"ところに優しさを感じるし、そこが1番の見どころにもなっていると思います。

あいつがそいつにそんな行動を!という驚きと感動が何度もあり、その度にエビングのみんなを好きになっていきました。

ピーター・ディンクレイジの紳士っぷりとか、ジョン・ホークスとサマーラ・ウェイビングのバカップルとか、脇役もいちいち魅力的。

ウディ・ハレルソンもいつもとはちょっと違う役どころで良いし、サム・ロックウェルは個人的にはキャリアNo.1の演技です!最低で最高!燃え盛る炎の中から、事件の資料を抱えて飛び出して来た時は嗚咽するかと思いました。

この映画は、どんな理由があろうとも、"問題から目を背ける"ことを絶対に絶対に良しとしません。

主人公のミルドレッドは、癌で捜査を諦めていた署長や、黒人を暴行する差別主義者の警官、青少年への性的虐待が横行するカトリック教の神父をしつこく責め、自分に缶を投げつけた少年はもちろんのこと、横で見ていたという理由で隣の少女にまで蹴りをお見舞いします。

"見て見ぬふり"をするすべての人に、FUCKと中指を突きつけます。

だからこそ、ラストでミルドレッド達は罰することへの疑問を感じつつもあの旅に出たのではないでしょうか。2人の姿は"見て見ぬふり"がはびこる世の中に向けた、怒りと警鐘のようにも映ります。

ミルドレッドが訴えたかったのは「お前らもっとちゃんと当事者になれよ」ということなんだと思います。レイプ事件も人種差別も青少年への虐待も、これは全部アメリカで、いや、あなた達の国で起きていることなんだ、と。

彼女達があの旅を決意したとき、眼前に広がるやるせなさに打ちのめされながらもミルドレッドは「どうするかは、道々決めようよ」とこぼします。あの言葉のなんとも言えない切なさと、同時に滲む優しさ。この優しさこそが"希望"だということなのではないでしょうか。