完璧な映画を観た。
物語に入り込んで気持ちがグラグラになるのも醍醐味だけど、こんな風に全てがパチッとはまっている作品を観るのも醍醐味のひとつ。映画っていいなぁと思うし、これを作った人、天才！と思う。
そんな映画でした。
ミズーリ州エビングの外れにある三連のビルボードを中心に、人の心の複雑さを、淡々とかつエモーショナルに、絶望的にかつユーモラスに描いています。
多分、町の人全員の顔と名前が一致する小さなコミュニティ。「普段は平和な町なんですよ。こんな陰惨な事件が起こるなんて、ねぇ」なんておばちゃんの声が聞こえてきそうな町です。
犯人への憎悪と、遅々として進まない捜査へのもどかしさだけでなく、自分の言動への後ろめたさも抱えている母。強いように見せかけてるけど、それが虚勢だとわかるシーンが何度かあってやるせなくなります。
警察官の署長にまつわるストーリーが泣けつつも洒落ていてホントに好きなんですが、この映画をありきたりのサスペンスドラマで終わらせない面白さがあります。
一番複雑な心の動きをするのがディクソン刑事。どうしようもない人ですが、３人の中で一番動きがあって、物語にリズムをつけています。最初と最後でガラリと評価が変わります。
人の心は複雑。そんなこと、他の映画ででも感じることはできるけど、こんなにたくさんの感情とその変化を、嘘くさくなく、やりすぎ感もなく、とっちらからずに作品にできていることと、観ている間はそんなこと考えさせもしない上手い作りに、終わってから久々に「すごい！」と呟いてしまいました。
