ギルド

スリー・ビルボードのギルドのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.8
映画なんだけど映画らしくない、生き生きとした作品で素晴らしいと思った。クライムドラマ映画であらすじを見ると日本の刑事ドラマみたいな展開になるのかなって思ったけど、ストーリーの結ばれ方だったり後述するキャスト陣の人間らしい演技で一つの生活空間を投影していると考えると納得が出来るし、こうであるからこそリアリティの高い素晴らしい作品になったんだなと思う。

 キャスト陣の演技が一番の見どころですが、何が素晴らしいかって善と悪を内包していて置かれた境遇や大切な人からのメッセージで心が変化していくところです。人の怒りや憎しみは強く蔓延り、人の思いや願いは他人に伝わらず、嫌なことばかりが起こったり後悔したりする。でも、一方で誰かの為に尽くしたい奉仕が一人の傷ついた心を癒してくれる。

 一見すると汚い言葉の罵り合いを見たり、クズなことを平気でやったり、行き過ぎて犯罪行為をやったとしてもやる動機には割と理解出来る姿を映し出していて、その根底にやった行為で誰かを救おうとする想いが微かに香るところが凄く生々しい。
キャストのうち誰が善か悪かって序盤の印象で決まって大体はそれが最後までこびりつく事が多いです。でも、この映画はそんな一連の行動や想いで印象がガラリと変わったし、彼らが持つ正義や人生観だけでなく動機までも掴めるのは他の映画ではあまり味わえない経験だと思います。

 そんな一連の行動・想いやストーリーの上手くいかなさがリアルなのが良いのです。決して強いメッセージを残す訳ではないし、クライムドラマとしては変則的な展開だなとは思うけど逆にこうでなかったら不満だったと思う。
特にミルドレッドとウィロビー署長との尋問シーンでの咄嗟の気遣い、ミルドレッドと聖職者とのやり取り、ウィロビー署長の持つ考えは良い意味で映画らしくない生々しいメッセージで好きです。

 いろいろひっくるめて、見終わった後にも余韻が強く残る良い映画です。良い映画は時間が経つことを忘れてしまったり、彼らの伝えるメッセージに釘付けに無意識になってしまう作品だと思うけど、スリー・ビルボードはそれをキャスト陣すべての演技で成し得ていて今年の新作映画の中でもダントツで良い演技を見たし、映画の世界に自分がいるかのような気分にもなりました。

素晴らしいキャラクターと演技を見たい人には強くオススメしたい作品です。
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