ユンファ

ブリグズビー・ベアのユンファのネタバレレビュー・内容・結末

ブリグズビー・ベア(2017年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

オタクとは、何かに心を誘拐された者のことだ。
ウルトラマン、仮面ライダー、ゴジラ、ガンダム、スター・ウォーズ…
とりわけ多感な子供時代に誘拐された心は、決して簡単には元に戻らない。
対象への愛ゆえに、周囲の人間を振り回してしまうこともある。
「ブリグズビー・ベア」が描くのは、そんなメガネオタククソ野郎に迷惑を被る人々の善意。そして、彼らの優しさへの僕らオタクからの最大限の感謝。
嘘の世界の可能性と面白さを肯定し、虚構をクリエイトすることが、現実をクリエイトすることだと説く。

「ブリグズビー・ベア」に登場する架空のテレビ番組「ブリグズビー・ベア」は、どう見てもクソだ。
けれど、そんなクソ番組をたった一人の視聴者のために700話以上にわたって製作し続けたクリエイターの狂気に、僕は涙した。例え法的に過ちを犯していたとしても、その驚異的な創造性を僕は否定出来ない。
物語のラスト、主人公が紡ぐ新たな虚構もまたクソに見える。
「他人の評価なんて関係ない」
クライマックスに放たれるセリフは、この映画のスタッフの偽らざる気持ちだ。
どんなにクソな創造物でも、その親にとっては価値あるものなのだ。

そんな価値あるクリエイトを通して、誘拐された主人公の心は新しい居場所を見つける。
けれど残念ながら、「ブリグズビー・ベア」は主人公と引き換えに、僕の心を誘拐していった。
今すぐ、あの続きを作りたい。
ユンファ

ユンファ