TAK44マグナム

BRAVE STORM ブレイブストームのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

BRAVE STORM ブレイブストーム(2017年製作の映画)
4.2
今こそ放て!必殺エレクトリッガー!!


西暦2050年、人類のほとんどは死滅、地球はキルギス星人のものとなっていた。
この危機を打開するため、春日兄弟が立ち上がる。
彼らは強化スーツ「シルバー」を使ってキルギスのロボット技術を奪取、それを2013年へと運び、ロボット工学の天才である紅博士に託した。
そして五年後。
紅博士の弟、紅健は地下格闘技で小遣い稼ぎをするボクサーになっていた。
紅健が地球侵略の障害になると判断したキルギス星人の魔手がのびる。
その時、紅健の命を救ったのは、あの春日兄弟であった。
五年前に行方不明となっていた紅博士と再会する健。
弟へ兄は告げた。
「おまえがレッドバロンを操縦して戦うんだ」



もうすぐ平成も終わりをむかえようとしておりますが、立派な昭和世代であるTAK44マグナムが今回ご紹介致しますのは、昭和の趣が香ばしい変身ヒーローと巨大ロボットのアクションが一作で味わえてしまうという、お得感いっぱいの夢の特撮クロスオーバー作品でございます。
その名も「ブレイブストーム」!
もう嵐のような勇気がビュオービュオーと吹き荒れちゃいそうな力作です!

その昔、仮面ライダーやウルトラマンの成功を受けて、二匹目のドジョウを狙う特撮ヒーロー番組が花開いた時代があったわけです。
曜日によっては、一日に何作もヒーロー番組が放送されていまして、ヒーロー番組の裏番組がヒーロー番組ってのも割と普通だったのですよ。
現在では東映か円谷プロぐらいですけれど、当時は他にも数社が特撮ヒーローを量産し続けていました。
その中でも異色のヒーローを世に送り出し、人気を博していたのが宣弘社でありまして、代表作は「スーパーロボットレッドバロン」やその続編の「マッハバロン」、「シルバー仮面(ジャイアント)」、そして「アイアンキング」あたりでしょうか。
そこで、元円谷プロ副社長だった岡部淳也に持ち込まれた企画が、レッドバロン、シルバー仮面およびアイアンキングのクロスオーバー作品だったのです。
昭和のヒーローを平成に蘇らせる企画は映画やテレビドラマ、そしてコミックなどで現在も人気ですが、そういったリバイバルブームの一環なのでしょう。
でも、さすがに一挙三作品となると風呂敷たたむのも大変ということで、とりあえずレッドバロン(因みにレッドバロンは、後に格闘ロボットものとしてアニメ化されてます)とシルバー仮面をコラボレーションさせることに決定。
(しかし、わざわざ大物俳優(?)を使ってまでして、次作にはアイアンキングも登場するかもしれないというカットを最後の最後に魅せてくれます。
このサービスぶりにはワクワクして、おのずと続編にも期待しちゃいますよ!)

そんな経緯で製作される事となった本作ですが、色々と外部から横槍をいれられるのを嫌って自己資金のみで作られているんですね。
足りない分にはクラウドファンディングも利用して、はっきり言えば低予算の代物なわけです。
たしかにショボく感じてしまう部分はそこかしこに散見されますし、ウリであるバトルシーンでも明らかに迫力が足りていないカットが足を引っ張っている感は拭えません。
しかしながら、東京のど真ん中で繰り広げられる巨大ロボット戦は限られた予算の中でこれだけ出来るのかと、そのロボットの実在感に驚かされます。
格闘アクションも、春日光二が装着するシルバースーツが新型になってからはグレードアップされますし、春日はるか役の山本千尋は太極拳の経験者で、その流麗な動きには目を奪われました。
それにしても、春日はるかは本作の登場人物の中でも最強じゃないでしょうか?
サイコキネシスやテレパス、はてはテレポート能力まで使えるうえに格闘能力もシルバーである兄以上・・・山本千尋だけで事件が解決してしまいそうです(苦笑)

話が少し逸れましたが、とにかくお金が無いなら無いで、どこに注力するかがうまくいっている好例だと思います。
何と言っても、重量感あふれる無骨なレッドバロンや、洗練されたシルバースーツなどのデザインがすこぶる格好良いので、多少の粗なんて気になりません。
オリジナル版の意匠を残しつつ、一発で目を惹くリファインがなされているのではないでしょうか。

正直言えばタイムパラドックスも関係してくるシナリオは、かなり荒削りで御都合主義も垣間見えるものですけれど、春日家と紅家の関係性など、本来はまったく違う世界の話であるレッドバロンとシルバー仮面をクロスオーバーさせるために最低限の説得力は持たせてあり、基本軸がブレたり、物語が瓦解していないのは評価できます。
何故、紅健がねらわれたのか?や、どうして博士を奴隷人間にしないのか?など、細かい疑問はたくさんあるのですが、そのぐらいは想像力でカヴァーしましょうか(苦笑)
同じく昭和特撮ヒーローを復活させた、井口昇監督の「電人ザボーガー」はギャグも満載でしたが、こちらはあくまでもシリアス一辺倒。
もう少しユーモアもあれば尚良かったのですが、一作目だからかそこまで余裕がなかったのかもしれません。
とりあえず一本の作品としては良くまとまっていると思います。
警告も無いまま、いきなり戦闘機が攻撃するなど、そういう昭和のノリもまた良しですね。

ただ、ロボット戦に限れば、早期にブラックバロンのレーザー砲をシルバーが破壊してしまうので、バリア以外にブラックバロンのアドバンテージがなくなってしまい、ほぼレッドバロン有利の展開に終始してしまうのは少し単調に感じられました。
それでも、レッドバロンの必殺武器エレクトリッガーが炸裂する決着は最高に格好良く、痺れました!すごく昂りますよ、エレクトリッガー!
いかにもな放電攻撃のビリビリとしたエフェクトが、男心(と言うか少年の心)をくすぐりますねぇ!

本作は劇場公開時、4DX版でも公開されたのですが、本当、無理してでも観に行けばよかったと少し後悔。
せめてブルーレイは手元に置きたくなりましたよ。
それほど、作り手の情熱やこだわりが感じられました。
予算が何倍もあるメジャー系の特撮やアニメのリメイクものよりも明らかに画的な完成度が上です。
やはり作品に対するリスペクトが最終的には決定的な差となってあらわれるのでしょうね。

「仮面ライダーオーズ」のオーズ役で有名な渡部秀の上半身ヌードが見られるのでママさんファンの方は必見。
あ、壇蜜は脱ぎません(←一応)

所謂、マニア向けに他なりませんが、日本特撮界の気概が感じられます。
昭和特撮ファンの方は勿論、そうでない方にも、SFアクションの力作ですのでオススメです!



※こういった系統は出来るだけ良い面をクローズアップして、応援してゆく方向です。
そうしないと衰退する一途なので。
大手がお金かけて失敗している例があまりにも多い中、熱意が予算的限界を凌駕している点は、大いに評価されるべきだと思うのです。


アマゾンプライムビデオにて