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007/ノー・タイム・トゥ・ダイのVigocultureのレビュー・感想・評価

4.7
有終の美。
終わらせ方としては文句なし。

マドレーヌの”生っぽさ”が今回凄かった。
前回はフィクションの中の可憐なボンドウーマンだったのが、とても人間らしい女性になっていて、それはメイクにも見て取れるし、鼻水垂らして泣くシーンがいっぱいあったり、すきっ歯が目立ったり、生々しい演技が盛り沢山で、そこには理由があり。

それに触発されるように序盤から感情爆発のボンドの人間くささ。女々しくてダサい内面を爆発させてる男性が走り回っていて、なんて純粋なラブロマンス映画なのと。

マドレーヌとボンドのロマンスをホラーサスペンス/アクション/ヒューマンドラマで一気に見せて、ここから2時間これに浸れるんだ〜みたいな期待高まる発車のシークエンス。待ってた007これこれ最高〜。

音楽は全編通して最高。抜群のアレンジに、ダイナミックな音楽。

ただ、最高だったのはここまで!!
2時間40分にするにしてはちょっと中だるみする展開ではあったよ!!
特にキューバより後。
パロマの「私はここまで!」でお楽しみはここまで!て言われてるかのように。
物語の展開というか、画かな。キャラが多いだけにそこも薄くなったしね。

スカイフォールとスペクターの良かったところはキャラが少なかったこと。
その分、映像(カット)の余裕にもつながったように思う。

今回なにせキャラが多いから、エンドゲームのラストバトルを延々やってる状態。(しかも半分新キャラ)


ドラマの軸としてはマドレーヌに照準を当てて、ボンドとのロマンスを濃密にしたからこそ、敵が薄い。
ボンドとサフィン、じっくり向かい合って話す007お決まりのシーンでも、「なにをいうとんねん」くらいの話が続く。
神になる云々は全ボス言ってきたからいいんだけども、ボンドとサフィンの関係性の薄さと、サフィンのマドレーヌへの感情が一方的すぎるのか、いまいち入ってこない。
見た目のおどろおどろしさと、存在感の薄さは不気味ではあったけども…。
Mが言ってた「昔の敵は殴り合えた」みたいなとこはたしかに。できるだけ存在を消す敵となるとね。

ブロフェルドの印象も弱いかなぁ。
あれだけ引っ張って出てきたわりには、なんかね。サイコキャラじゃなかったのにサイコぶられてもと思ってしまって、また「ダークナイト」やってるよと。
スカイフォールでも散々やったのに、もうジョーカーやらせなくていいよ。

フィリックス良かったけど、要るか要らないかで言うと〜…。
クレイグ版だとカジノロワイヤルの印象だけで、スカイフォールはしょうがないにしても、スペクターで出てきてなかったのが痛い。この関係はパロマとノーミに引き継がれてもいいかもね。


はじめの雪山〜カーチェイス〜OPまでの映像最高
キューバはチープさが逆にイイ
真ん中の森でのアクションいまいち
最後のアジトでのアクションいまいち

結局IMAXの良さを感じたのがはじめ20分くらいだけだったかな。

長回しはしてるけど、全体の空間作りが狭い感じがした。ゆったり感、余裕感、みたいなのが少なくて、ほんとになんでだろうっていう。
長回しの魅せ方を”緊迫感”に全振りしちゃった感じかな。


撮影監督のホイテヴァンホイテマとロジャーディーキンズは、贅沢な魅せ方がすっごい上手くて、スペクターとスカイフォールでもそうだし、2049やダンケルク、TENETと、彼らのIMAXの使い方を見た後だからか、ちょっと物足りなかった。

壮大な景色は要所要所でもちろん撮ってるけど、ほんの少し寄りすぎなのか短すぎなのか、切り取り方が悪いのか。
印象に残るショットが少ない。

サンシャインシネマだと彼らとの差は感じやすかった。
音響の使い方は良かったけどね。

あくまでも画で見せるIMAX映画だからこそ、画の強さを感じられたのは冒頭OPまでかな。
ドラマはめまぐるしいし、登場人物は多いわりに2.5時間が長く感じてしまったのはそのせいかな。画で持たせられてない感じです。

とはいえ、冒頭とラストが文句なしで良かったということはいい映画だったなと思うし、もう一回観たい。
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