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タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のkouのレビュー・感想・評価

3.5
《希望を託す》
チャン・フン監督、ソン・ガンホ主演。1980年に起こった光州事件の実話をもとに映画化した作品。人情味あふれる人間ドラマが主体だが、そこには残酷な歴史の事実が覆っている。その重みのある物語が素晴らしかった。

ソウルのタクシー運転手マンソプ(ソン・ガンホ)が光州事件の撮影をしようとする記者、ピーターを載せて光州に向かう。そこでは学生や市民のデモが起こり。それを鎮めようと軍が市民に銃撃戦を行っていた。子供をソウルに残してきたマンソプは、危険な状況の中、ある決断をする。

映画の序盤、人情味あふれる場面が続き、映画のコメディ部分が強い。しかし、中盤以降で映画のテイストがガラッと変わる。序盤のコメディよりの部分が明るければ明るいほど、終盤のつらい展開が余計際立ってくる演出になっている。

そして映画のクライマックスは見事な盛り上がりを見せる。映画的な嘘ではあるが、それでもある希望を託す人たちの行動に涙無くしてみることができない。とてもエモーショナルな展開だった。ある意味でペンタゴン・ペーパーズとも似たものを感じるが、事実のために命を投げうった人々の尊さに感動する一作だった。
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