タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のJinのレビュー・感想・評価

”あなたのタクシーから今の韓国を見物したい”



1980年、軍事独裁政権下の韓国で起こった悲劇、光州事件を世界に伝えたドイツ人記者と、彼を運んだ平凡なタクシー運転手の実話（をベースにした物語）。
最初のほのぼのした場面からは想像つかないほどの悲惨な事件の描写が印象的だった。

そもそも光州事件に注目したことがなかったので面白かった。
民主化運動の高まる中で、軍が戒厳令を敷き、民衆のデモと衝突。
ソウル近くの小さな町・光州を封鎖して、非道な弾圧を行った。
記者は町から排除され、政府に都合のいいニュースに変換されて国民に伝えられた。

戒厳令とデモ、台湾映画の「GF*BF」を思い出した。
民主化の過程で多くの国が通る道なんだろうな。


物語が全く無知なソウル市民のタクシー運転手の目線で進むのが共感しやすかった。俯瞰じゃないから、事件の地獄絵図がそのまま目に飛び込んできて、鮮烈。
事情がわからないまま巻き込まれて、段々理解していく。
首都のすぐ近くでこんな事件が起こっていても伝わらなかった当時の怖さ。
この悲劇の実話を、笑えるセリフや明るいキャラクター設定でかなりみやすく作られていたのでとても良かった。

潜入するドイツ人記者のセリフや市民のセリフも熱くて、「ジャーナリストかっこいい！」って感じ。
テンポもいいし、手に汗握るシーンも多いので飽きなかった。
最後の脚色も平和でいい。本当は殺されてるのかもしれないのに。


最後に出てきた実際のインタビューシーンで泣ける。
結局再会できなかったという悲しさが実話っぽくて好き。