みかんぼうや

犬猿のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

犬猿(2017年製作の映画)
4.0
うわ~、吉田恵輔監督作品、観れば観るほど好きになっていく!この監督の作品、もう本能的に好きとしか言いようがない。どうしてこんなに登場人物に寄った丁寧な人間描写なのに、どこか登場人物たちを突き放したような冷たくて俯瞰した映像になるのだろう。そして、俯瞰しているように見えて、最後には監督の人間味溢れる優しさもしっかりねじ込んでくる。完全にこの作風の虜。この作品も本当に面白かったです。

ラスト3分までは、「ヒメアノ~ル」的回想シーンまで入れちゃって、「やっぱり吉田監督は優しいな」とか「さすがにちょっと綺麗にまとまり過ぎだよな」なんて思い、「この作品は吉田監督流の少し捻くれた人間賛歌なんだ」と理解しかけていたところ、そうは問屋が卸さない。

ラスト3分で、見せつける「人間そんなに簡単には変わらんよ」というリアリティ。なるほど、これは人間賛歌ではなく、とってもシニカルなブラックコメディだったのだ。

内容は、1組の兄弟と姉妹の話。タイトル通り、どちらも犬猿の仲。たったこれだけの設定をここまで面白くしてしまう吉田監督の手腕。そして、他作同様、キャスティングがまた絶妙。

兄弟側(窪田正幸×新井浩文)は言うまでもなく実力派ですが、これに対して決して演技が上手とは言えない筧美和子と同じく演技素人なはずのお笑い芸人ニッチェの江上敬子の姉妹がなぜか妙にハマっている。しかも、ニッチェ江上氏、演技上手くないですか?こんなに演技ができる人だとは全く知らなかった。

これで吉田監督作品は5作品目。新しめで評判の良い作品から観ているとはいえ、五発五中。本当はこちらより先に「愛しのアイリーン」を観るつもりだったのですが、時間の関係で短い作品を選ばざるをえず、ということで本作を観ました。が、この大当たりっぷり。これはもう「愛しのアイリーン」にも期待するほかありません。
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