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カオス・ウォーキングのjonajonaのレビュー・感想・評価

カオス・ウォーキング(2021年製作の映画)
3.0
思考が霧のように視覚的に現れてしまうノイズの設定はちょっと興味を惹かれたが、やはりというかおもしろくはない…

男ばかりの星で思考が剥き出し、そこ唯一の女が現れる…という設定はあまりに直接的すぎやしないかと少し不安に思って鑑賞を始めたが、案の定なにかの寓話を語るにはあまりに比喩がそのもので作り手側もノイズの扱いに困ってるように思えた。もっと活かせたと思うのだが…

思考を読ませない方法は大概名前連呼かいつもの慣習を想像するなど同じのばっかりで工夫がない。長年むきだしでみんな生きてたらもっと思考武装するとか、そもそも普通の人間のままいれる訳ないと思うんだがそこの面白みは欠けてる気がした。

有害な男性性問題が主題なのは明白で、トッドヒューイット(トムホ)が悲劇ののち男だろ泣いちゃ駄目だと懸命に取り繕おうとする際に本心を知ってしまったバイオラ(デイジ)が『辛いよね』と泣いてもいいんだと寄り添うシーンはこの映画の白眉たりえたはずなのだが、
正直なぜかその時のデイジーリドリーの表情は勝気な顔が災いして鼻につくし、そんな筈ないがなんならちょっと笑って見えてしまってそれこそノイズになった。

あまりにひねくれた意見かもしれないがもっと言うと、マチズモが問題でありテーマであるこの作品でよく分からんけど可愛い女性を助けるために東奔西走する男性というのはそもそもが矛盾を孕んでるのでは無いかとまで思う。
男性の有害な面が社会に重く存在するのは間違いない事実だが、同時にある種のシンデレラストーリーの根幹にもマチズモが内在されてると思うのだ。身を挺して女を守る男という構図、は本作では序盤こそドラマ展開に有効だとしても、どこかで見たことのない関係性に反転させることが必要だったのではないか?と思ってしまう。

てか露骨に描くならそれはそれで彼女を見た男達が『辛抱たまらん!』的な劣情が湧かんのも不思議なかんじ

作り手の志は現代的だし応援したくなる。それでも苦言を呈すとこの設定の露骨さは欠点だと思う。わずかなバランスの問題だとは思うのだがそれが自分にも見えない。

最後にネタバレなのだけど本作ではかわいい犬が死にます!犬が傷つくとこ見たくない人みないでー!わあーーー!!
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