このレビューはネタバレを含みます
しっかりカッコよくスカッとするように作っあるからこそ、モヤッとするようにもなっている問題作。
旧作狼よさらばの話をしっかりやってるけど全然違う後味。
イーライロスは食人族からグリーンインフェルノへの改変が大成功したように、過去の名作を現代風にアップデートする名手。
今回もSNSやYouTubeなどの現代的要素も加え、また主人公の職業を建築士から外科医に変えたこともあり、平凡な平和主義の男がビジランテに変わっていく話をしっかり説得力持って描けていた。
特に銃を手に入れたり、カモフラージュのための服の入手経路や犯人への手がかりを掴む件も納得できてスムーズな流れになってて、職業改変は成功だと思う。
もう一つ良かったのは親身に接してくれる弟の存在を付け足したこと。ヴィンセント・ドノフリオの名演も含めて、主人公があっちの世界に行き過ぎない理由づけになってて上手い設定では。
旧作だと主人公は母子殺しの犯人は追わずに街のダニ共を片っ端から殺して回るんだけども、弟の存在が普通の幸せに戻る命綱になっていた。
そして最初の母子襲撃シーンはホラー演出、犯人達を追い詰めていく時のフレッシュな拷問描写(神経切りとエンジンオイルのアイデアは目からウロコ!笑)に若干ブラックな暴力描写もあって見応え充分。イーライロスの資質がしっかり発揮されてて、普通にバイオレンスエンタメとしては軒並み文句なし。
娘も回復したし、ラストの手の銃を撃つ真似でバシッと終わるのも旧作と同じで、スカッと終わってくれて
良かった!って言いたいんだけど‥
この題材でこのスカッと感はどうなのか。
批判を受けているように、アメリカ銃社会を肯定しているようにも見えてしまう。
今年銃規制デモがあったばかりなのに。
もちろんグリーンインフェルノであれだけ見事に正義と悪について描いたイーライロスだけに無邪気に無神経にこんな話にしたとは思えない。
インタビューを読んでも問題提起がしたかったと言ってるし、
これはあえて主人公の復讐が上手くいって、人生もある程度取り戻すように描いて、だからってあなたは自警活動や暴力による復讐を肯定できますか?っていう問いかけなんだろう。
こういう手法もありっちゃありだと思う。現実ではあんな上手く行かないだろうし、主人公の真似して死んじゃう自警団気取りのオッさんでてくるし、一応考えさせられる内容になってる。
ただ、それにしても主人公が復讐を始めた事による代償が無さすぎるのでは。
逮捕されるとか、弟が死ぬとか復讐の連鎖による悲劇が何かしらあっても良かったんでは。
個人的には主人公が闘いの負傷で二度と外科医の仕事ができなくなるみたいな終わり方がバランスいいと思う。
後意図的に観客に判断を委ねてるなと思ったあたりは
ボーリングの玉が犯人に落ちてきたおかげで主人公が助かるシーン。
あそこは本当にただの偶然なので
劇中でレインズ刑事が白々しく言うように「神のご加護」があったかのように見えてしまい、主人公の行動が天からも後押しされているかのように見えてしまう。
後怖いなと思ったのはガンショップでの銃購入手続きの簡単さと
主人公が2回目に店を訪れた時に女性店主が彼のことを忘れていたこと。
こんな風にみんな簡単に銃を手に入れられる社会怖い。
主人公も銃登録してない段階で何故か弾手に入れてたし。
警鐘を鳴らしているのかいないのモヤモヤしたけど、アクションとしては普通に楽しめる作品。