チョマサ

花筐/HANAGATAMIのチョマサのレビュー・感想・評価

花筐/HANAGATAMI(2017年製作の映画)
5.0
見ていて最後までついて行けるか不安になった。
案の定、クライマックスの場面、そのヴィジュアルの強さに考えてたことが吹っ飛んで、分からなくなりそうになった。
いや、ほんと何なんだこの場面?!ってシーンばっかだった。

戦争に居場所や未来や友を奪われた悲しみから来る、反戦メッセージが目につく。でも、そういった未来が奪われた若者のドラマよりも、少年少女のままでいられなくなることで失われていく美しさや友情の物語として見ていた。第一、この物語は萩尾望都の『トーマの心臓』とか、ああいった学園ドラマを日本を舞台にして置き換えている。この置き換えがよく出来てると思って、原作と監督のどっちが上手いのか気になった。


戦争も自分たちの子供の日々が終わるタイムリミットの装置として見たほうが、しっくりきた。村田雄彦の先生の様子とか見るとなおさら。青春ドラマよりもヴィジュアルもあって、もっと観念的になってる。

登場人物の関係も、互いに欲しているものを求めて相手を選んでいて、この組み合わせもよく考えられてた。俊彦は見るからにバカの役なんだけど窪塚俊介が見ていてイライラしないうまい具合に演じてる。大人になり成長してからの演技も良かった。柄本時生の阿蘇が道化といわれてたけど、俊彦のが道化である。たしかにバカじゃないと全員と接点のあるキャラにはできないよな。

それに稀代のヴィジュアリストの映像で言葉に出来ないけど、伝えたいものが何となく分かってしまう。どうしてこんな変な映像になるのか全然意図が分からないけど、間違っていない。色調から動きに配置まで全てが加工されてる。

ただ、やっぱり変な映画で、かなり若い学生の役を30越えてるおじさんが演じてる。リアルに撮ったら不自然なんだけど、映像が加工されまくって作り物に見えるから、おっさんが演じててもあんまり違和感がない。おまけに演劇みたいな演技も不自然に見えない。配役もハマってるから意外と見れる。長塚圭史の死神みたいな男と門脇麦の病的な女が特に。柄本時生はほんとこういうボンクラ役が似あう。

音楽も常になりっぱなしで視覚と聴覚で情報量が多い。映像を左右反転とズームで映画のリズムを作っているのには驚いた。全然考えつかない。

大林映画に出てたキャストもたくさん出てて、入江若葉、根岸季衣、高島政宏、南原清隆が出てた。ピーターも出てて驚いた。
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