あしたか

バッド・ジーニアス 危険な天才たちのあしたかのレビュー・感想・評価

4.2
[あらすじ]
リンは天才女子高生。決して裕福とはいえない生活を送っているリンだったが、国内有数の進学校に特待奨学生として転入を果たす。試験の最中に、ある古典的な方法で友人を助けたことをきっかけに、あるビジネスを持ち掛けられる。それはテストの答えと引き換えに、生徒から代金を貰うというものだった。


スリル★★★★★
社会風刺★★★★★
グレース役の女優の可愛さ★★★★★

圧倒的緊張感で描かれる"カンニングサスペンス"。ただし自分がカンニングするのではなく、全ての問題を正確に解いて周囲にこっそり答えを教える…。
答えを伝える為の予想も付かない方法や、徐々に綿密化していくカンニングスタイルにはハラハラさせられっぱなし。最終的にとんでもないスケールになるのだから驚くほかない。"高校生版オーシャンズ11"と呼ばれるのも納得の興奮と快感がある。実にスタイリッシュ。

リンがズブズブと沼にハマっていく過程は痛々しい。しかし途中からどんどん様になってきており、顔も逞しく美しく変貌していくのは大きな見所だった。額に汗を浮かべながら仕事を遂行する姿は甚だクール。

リンがカンニングビジネスに手を染めるきっかけはテスト中に友人を助けたことだったが、しかしこのビジネスが成立する背景には洒落にならない貧富格差がある。
リンは昔からひたすら優等生の天才。たまたま家庭が貧乏であるということからお金を貰えるというエサに食い付いてしまう。毎日せっせと勉強しては、必死で解いたテストの正解という商品を依頼人に売り渡す。
対して依頼人の友人たちは家庭は裕福だが成績はイマイチ。自分たちは何の苦労もせず、貧乏人が用意した果実を文字通り横から掠め取っていく。
試験中のカンニング現場が、格差社会の縮図になっていることに気付いた時は何とも鬱々たる気持ちになってしまった。

リンとは別のもう1人の天才・バンクが依頼人たちに踊らされた挙句辿り着く結果もまた、極めて哀れでやるせないものだった。リンとバンクの間の心理の機微を描く人間ドラマにも注目だ。

そんなこんなで、飛び抜けた娯楽性と優れた社会風刺性を兼ね備えた、極めて出来のいいサスペンス作品であると言えると思う。
ラストの決断に関しては、若い学生が主人公である以上あのような無難な結末にするのは仕方なかったと思う。そもそもリンはこの作品においては被害者かつ善人なのだから、救いは絶対に必要だった。
徹頭徹尾この作品の良心であり続けたリンの父親との終盤のやり取りはグッと来るものがあった。リンに幸あれ(出来ればバンクにも)


P.S. 有能な人材が悪事に手を出すという点で、先日見たイタリア映画『いつだってやめられる』を思い出した。
あしたか

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