にしやん

マルリナの明日/殺人者マルリナのにしやんのレビュー・感想・評価

4.0
インドネシアの離島の田舎を“西部劇”の舞台に見立てたアイデアがとにかくあっぱれやな。劇中の舞台となるインドネシアの離島の風景と島の住民の表情には、“西部劇”を連想させる荒涼とした雰囲気やとかどこか張りつめたもんが確かにあんもんな。多分インドネシアの僻地に行ったら刀を普通に持ち歩いたり、強盗団が頻繁に家襲撃したりとかまだあるんやろか。経済発展が著しいインドネシアでほんまにこんな現実がまだあるんやとしたらそれはそれで酷いけどな。現実かどうかは別としても、ショッキングかつバイオレンスな描写とか、どことなくシュールでクールな演出とかで、見事にインドネシアの“西部劇”へと昇華させてるわ。
それと、もひとつこの映画の優れたとこは、通常の西部劇と違て、ならず者達と対峙する主人公を男性から女性に換えたとこや。単なるエンタメ作品にとどまらず、インドネシアの田舎でまだまだ辛い状況に置かれている女性達のいたたまれへん思いみたいなもんも代弁しようとしてるわ。女性主人公とこの島に住む子供から老人に至るまでの各年代の女性達とのそれぞれの関わり合いもストーリーに上手く取り込んでる。強盗団に襲われる主人公はもとより、主人公と関わるどの年代の女性達も、男に直接的に虐げられたりとか、男と比べて低い立場に置かれてることを醸し出してる。女性が台所に佇むシーンなんかも秀逸やったわ。インドネシアにおける女性の社会的な立場を象徴してる気したわ。
主人公の演技力も見逃されへんな。感情を極力抑えた繊細な表情や演技をとても自然にやってのけてる。立派なもんや。脇役達も主人公に負けず劣らずレベル高い。
撮り方も良かった。カットごとに定点固定カメラによる長回しを徹底してるとこなんかも、堂々としてるというか潔いというか、めっちゃ気持ち良かったわ。
わし、実はインドネシア映画は初めてやってんけど、いきなりレベル高いな。びっくりやわ。ユーロスペースもほぼ満席やし。ええ映画っちゅうんは殆ど宣伝せえへんかってもこれだけ客が集まるもんなんやな。ほんま大したもんやわ。
にしやん

にしやん