にしやん

ラスト・ムービースターのにしやんのレビュー・感想・評価

ラスト・ムービースター(2017年製作の映画)
4.2
晩節を迎えたハリウッドの大スターで、映画祭に招待された機に故郷に戻った彼が、自分の人生を振り返る姿を、ユーモアを交えて描いたヒューマンドラマや。

主演は2018年9月6日に惜しまれつつ他界した「かつて」のハリウッドスター、バート・レイノルズや。わしの年代から言うてももうちょっと世代が上の人やわ。わしにとってのバート・レイノルズっちゅうたら、古くは「トランザム7000」「キャノンボール」、もうちょっと後ではやっぱり「ブギーナイツ」やろ。タランティーノの最新作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」に、レイノルズはスパーン牧場のオーナー役として出演予定でしたが撮影前に死去。ディカプリオが演じたリック・ダルトンはレイノルズがモデルとも言われてるらしいわ。この映画でレイノルズが演じるヴィック・エドワーズっちゅう架空の役者が「ワンス〜」のリック・ダルトンのその後の姿のようにも見えたりもしたわ。

架空の映画スター、ヴィック・エドワーズを描いた映画やけど、その経歴はバート・レイノルズ自身と殆ど重なってるやんか。そんなんやったら、わざわざ架空のキャラクターを作らんかて、レイノルズがそのまま本人役でもよかったんとちゃう?って思ったりもしたけどな。せやけど、若い時分はハリウッドの大スターとしてタフガイやとかセックスシンボルと持ち上げられ、その後出演作に恵まれんと、人気の低迷や離婚に自己破産と不遇な晩年を送った彼の生涯最後の作品がこの作品やって、いったいどんな気持ちでこの映画に出たんやろ?わしは彼は最後は最高にハッピーやっと思いたいわ。まじで泣ける。

作品のテーマは「ちょっとだけかもしれへんけど、いくつになっても人は変われる」っちゅうことやろ。かつて成功者として生きた主人公が、自分がもしもういっぺん人生をやるとしたらと語るクライマックスのセリフは、彼が耐えてきた悩みと苦しみのあまりにも深いもんを感じてしもて、涙なしで観ることがでけへん。レイノルズ本人の境遇とマジで重なってて、素晴らしい演技や。

バート・レイノルズへもそうやし、映画への愛情のあふれた映画や。偏屈で孤独に生きた男の再生の物語として感動できる作品や。レイノルズが、過去の出演作の自分自身と共演するシーン。そこで交わされる会話がほんまに胸に染みるわ。そこそこ歳いったもんは皆そうなんとちゃう?若い頃の自分にわしかて同じことを言いたいわ。それと、ラストかて新宿カリテの場内はすすり泣きの声が聞こえたわ。中高年には堪らんやろな。人間誰かてそうやろ。やっぱり後悔したまま死にたないもん。特に後ろめたい過去を持つ男にとってはな。人生の終盤には是非故郷に帰ろうや。

ムービースター、バート・レイノルズに合掌。
にしやん

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