にしやん

ある船頭の話のにしやんのレビュー・感想・評価

ある船頭の話(2019年製作の映画)
1.0
近代化が進む日本の山辺の村で船頭を生業とする男の暮らしが滅びゆく姿を描くヒューマンドラマや。俳優のオダギリジョー初の長編監督作で、柄本明久々の主演作や。

まず、出だしのシーンからして、横からガンガンライティングしてる柄本明が川辺で仁王立ちしとる。うん?こんな山の中の川辺で全く不自然な画やな。いきなり人工感出してどないすんねん。何の意図なんや。冒頭からしてから嫌な予感すんな。

これ、人気俳優の初監督作品やろ。彼がかわいそうやんか。誰か脚本家が脚本に手を加えなあかんレベルや。周りのもんがちゃんと言うたらなあかんわ。そのままこんな素人が書いた脚本で撮ってしもてどないすんねんな。

映画のテーマは、社会の発展や進歩で切り捨てられていくもんの哀しみということなんやろ。それを新潟の阿賀野川や福島の只見川の美しい風景の中で描こうということなんやろけど、まあ確かに霧の立ち込めた川面はキレイやわ。よう撮れてる。せやけど、その美しい画の中に、切り捨てられていく主人公の哀しみがいまひとつ宿ってへん気ぃするわ。それどころか、ストーリー自体にも主人公の哀しみがあんまり感じられへん。

それと、出てくる役者が全部と言ってええ程大物俳優ばっかりやねんけど、誰もがその役になり切れてへん。これは役者の問題やなく、脚本と演出の問題や。脚本や演出として役自体が全く作れてへんのに、それをベテランの存在感のある役者が演じたら、役よりも俳優そのもんが勝ってまうっちゅう、まあそう言うこっちゃ。特に軸になる二人、柄本演じるトイチと村上虹郎演じる源三に全く実在感があれへん。柄本明本人と村上虹郎本人がボロい格好して、河辺で芝居してるって感じにしか見えへんかったわ。なんせ台詞ができてへん。役者に台詞が追いついてへんねんって。

謎の少女にしたかて、彼女の素性は最後までよう分からんかったけど、そんなことよりも、映画のテーマやトイチとの関わりが曖昧すぎて、何の役目で登場したんかもいまいち見えん。ただ、出てきた登場人物の中では彼女が一番実在感があったわ。それがこの映画の唯一の救いかもな。有名な役者や無かったことと台詞が殆どあれへんかったんが幸いしたわ。台詞が殆どあれへん役がいちばん良かったって、どんな映画やねん。言わずもがなや。
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