鰯

判決、ふたつの希望の鰯のレビュー・感想・評価

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)
3.5
ある侮辱行為について

キリスト系政党レバノン軍団を支持するトニー。彼が自宅のベランダで水やりをしていたところ、補修工事をしていたヤーセルに水がかかり、トラブルになる。口論は解決する気配を見せず、2人は法廷で相見えることとなる。

レバノン(特にベイルート)にはいろんな信条を持つ人が集まっていることくらいを知っていれば、十分楽しめると思います。政治的な要素は多分にあるものの、話の骨格は「スリービルボード」に近い。正義の執行を求めた主人公の行動が事態を悪化させ、気づけば取り返しのつかないところまで。そして、ふとしたきっかけから当事者の善意が事態を前進させていく。事態の悪化具合には、思わず笑ってしまう。悪化しすぎて、大統領が出てきた時にはニヤニヤしてしまいました。内容はシリアスなのに。かの作品が好きな方には是非勧めたい。
初めは、「いやもう謝っとこうよ」と思う訳だが、各々には引き下がりにくい事情もある。誰しも初めに抱いたイメージとは異なる一面を持っている。「被害者」というパブリックイメージが、勘違いや伏せられていた事実によって覆されていく。この辺りもスリービルボードっぽい。尋問と反対尋問によって、関係者の二面性に迫るのは上手いと思う。

一方で法廷の描写には疑問も。こんなに荒れたら退廷させるのでは?というほど荒れる。また法的な文言が少なく、弁護士までも感情論に終始したのは「これどこまでコメディとして許容できるの?」と疑問に感じてしまいました。笑えるといえばかなり笑えるけれど
少し残念なのは食事シーンが全くないこと。生活スタイルがいまいち見えませんでした。
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