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モリのいる場所のkojikojiのレビュー・感想・評価

モリのいる場所(2018年製作の映画)
3.8
始まりがいい。
天皇陛下か、総理大臣かわからないが、お偉い人が、この映画の主人公熊谷守一(モリ)の絵をじっと見ている。
まだ、じっと見ている。
そして
「この絵は何歳の子供が描いた絵ですか?」とおつきの人に聞く。

そんな絵を描く主人公。彼がどんな画家か、このエピソードだけで充分表現されている。上手い。

監督は沖田修一。私の大好きな「横道世之介」「キツツキと雨」「滝を見に行く」の監督だ。


※(味わう映画だから、ネタバレはないだろうと思う。
でも………やっぱりネタバレ注意)



30年以上の間、自宅の庭でさまざまな生きものたちを眺めて日々を過ごす画家・熊谷守一(山崎努)そして妻(樹木希林)。2人暮らしの彼等家には来客が絶えず、常に楽しくも穏やかな時が流れている。
しかしそんな彼等の家のすぐ横にマンション建設の話が持ち込まれる。
……だけのストーリー。

あとは、ちょっとしたエピソードで綴る。
旅館の看板を書いてもらおうと信州からわざわざやって来た旅館の主人のエピソード。
モリがどう書いているか、なかなか見せない。そして書いたのは?🤣

「文化勲章候補に選ばれたんですが、どうされますか?」と国からの電話での問い合わせに対する夫婦の対応とドリフターズ。なんでドリフターズ?🤣

マンション建設現場監督が天才ではないかと思っている息子の絵に対するモリの寸評。これがまたは可笑しい!どう評価したのか楽しんで欲しい。🤣

こんなエピソードを交えながら、モリと妻の生活を見せるだけの映画だ。

しかし、この夫婦は食事するだけで笑わせてくれる。

モリはひたすら虫を、メダカを、猫を、庭の木々を、空を見ているその姿が妙に惹きつける。🐞、🐜、🌿、🍂、🌤

それを写真家とその助手がカメラで追っている。その他様々人達が、自然とこの家に集まってこの夫婦の世話をやいている。
夫妻は何も特別なことはしていない、しかしこの家に行ってみたくなる。📷

生活そのものが何とも言えない味わいがあり、微笑ましい。

笑い転げるわけではない、ずっと微笑んで観ているような、ずっと奥の方が暖かくなるような、不思議な気持ちにさせてくれる映画だ。

この監督の独特の味わいを、日本映画界の個性派で一時代を築いた山崎努と樹木希林の名優二人が行き着いた「枯れ」の演技を見せてくれる。
じっくり味わって欲しい映画だ。

2023.03.13視聴111
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