きんゐかうし卿

グリーン・ヘル/マウス -終わらない戦禍-のきんゐかうし卿のネタバレレビュー・内容・結末

2.0

このレビューはネタバレを含みます

 

自宅にて鑑賞。スペイン産、日本劇場未公開作で原題"Maus"。全篇に亘り、幻想的な描写でストーリーもあやふやである。夢か、嘗ての記憶か、何が現実に起こっているのかを曖昧にする意図か、音声のみの暗転した画面が長く、どっしり構えたゆったりとしたカメラワークが大半を占め、ボケた背景にぼんやりと何かが写り込む被写界深度の浅い画が多い。内戦による虐殺や宗教観等、馴染みの無い背景に圧倒的な知識・情報不足で、評価が難しく余り愉しめなかった。後味も悪く、鑑賞にはそれなりの覚悟を持って臨むべし。40/100点。

・序盤に続き、立ち去る後ろ姿をゆっくりと追い掛ける意味有り気なショットが、終盤にも登場する。序盤で“アレックス”のA.ヴィトゲンシュタインが撃たれた辺りからはぐらかされた印象で、その思いはラスト迄続いた。

・舞台となるボスニア・ヘルチェゴビナについて、昔のニュースでモザイク国家と云った漠然とした知識しか持ち合わせておらず、鑑賞後にネットで調べても何となくしか掴めなかった。パッケージにある「正体不明の生物」や「あらゆる恐怖が蠢く地獄の森」と云う謳い文句、或いはメインビジュアルの女性の口元を塞ぐ不気味な手に邦題等、全てがミスリードであり、少なくとも“正体不明の生物”は主人公側に敵対する存在ではない。

・原題はA.テルジチの“セルマ”が同じ音なので最初に憶えたドイツ語と説明があるが、後半では彼女自身を指す語となっている。ラストは嘗て彼女が経験してきた地獄が今や他国の日常に迄浸食し始めたと云った処か。

・鑑賞日:2018年5月4日