TAK44マグナム

IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

3.7
ビックリ怪獣さん大集合〜!


ホラー映画史上No. 1の大ヒット作となり、日本でも殺人ピエロのペニーワイズが知られるようになった「IT/〝それ″が見えたら、終わり」の続編。
前作は主人公たち「ルーザーズ」の子供時代のお話でしたが、本作はいよいよ27年後、それぞれ大人になった彼らの本当の戦いを描いております。


27年前、デリーの街を襲ったペニーワイズによる大量の子供殺し。
弟を失ったビリーをはじめ、7人の少年少女たちによって、ペニーワイズは倒されたかに思えた。
しかし27年後、またもやペニーワイズの脅威がデリーに舞い戻る。
街にひとり残っていたマイクの呼びかけで、「またペニーワイズが戻ってきたら自分たちも戻ろう」と誓い合っていたルーザーズの面々もまた帰郷してきた。
何故か子供時代の記憶が曖昧だった彼らだったが、デリーに帰るなり段々と当時の記憶が蘇ってくるのであった。
ペニーワイズを葬れる唯一の儀式に必要な、それぞれの思い出の品を探すことになるが、それはトラウマと対峙するということであり、つまりはペニーワイズの恐怖と対峙する事を意味していた。
心が折れそうになりながらも、ビリー達は思い出の品を揃え、再び「井戸のある家」へと集結するのだったが・・・


何と言うか、これはホラー映画というより怪獣映画のノリ(汗)
前作からしてそうでしたけれど、「怖さ」よりも「面白さ」を優先しているように、ビジュアルや音で驚かしにかかってくる、いわゆるお化け屋敷タイプの映画になっていて、更にそれがパワーアップしたような感じですね。
パワーアップしすぎて、ほぼ怪獣に襲われる映画になっていますが(汗)。
個人的にどうなるのか一番の興味のもとであった「ペニーワイズの正体」からして、原作や90年版も怪獣といえばそうだったのですが、かなりビジュアル最優先の「それ」にアップデートされています。
90年版を観た時に感じた「なんじゃこりゃ感」は拭えたものの、原作からかけ離れるわけにもいかず、VFXが派手になっただけのような気もしたりして。
最終的には意外と呆気なく、ペニーワイズが何だか気の毒に思えてしまいましたよ(苦笑)。

そして、前作でもコメディか?というぐらいにペニーワイズが出てくると笑ってしまったのですが、淡い青春のような少年たちの夏の話ではなくなった本作は、更に笑える作品となっていました。
大人になったからといってアダルトな雰囲気もありませんし、セクシャルな方面の展開も無いので(無くて正解ですが)、余計にコメディ風味が際立った気がします。
また、観る人それぞれではありましょうが、個人的には既視感バリバリの恐怖シーンばかりだったので怖がるよりも笑いをこらえるのに精一杯でした。
(ベバリーの場面で出てくるババァだけは怖かったです。後ろで変な動きしている時は冗談かと思ったのですが・・・)
遊園地の鏡の間も便利なのは分かりますが使われすぎのような気がしますし、いくらなんでも「遊星からの物体X」や「エルム街の悪夢」シリーズ等、既存の作品から頂いたのが多すぎで、やっていることが殆ど変わり映えしません(特に、ペニーワイズはもう1人のフレディ・クルーガーと言ってもおかしくない)。
そういった過去作品を未見であればフレッシュな状態で観られるかもしれませんが、それでもホラーというより、全力でエンターテイメント方向にふったアトラクション映画と捉える方が多いのではないでしょうか。
しかし、決してつまらないというわけではなく、3時間弱の長丁場をもたせることが出来るエンタメ性という点においては素晴らしいポテンシャルを持った作品であると思います。
実際、最後まで退屈せずに鑑賞できましたしね。
それに貢献したのは、やはりペニーワイズのキャラクターが面白かったからで、愉快なオッサンの七変化に心踊りましたよ。
中の人はオッサンどころか超イケメンですけれど。

大人になったルーザーズの面々については細かくは割愛しますが、概ね子供時代の印象と変わらないキャスティングではないかと。
ベンなんてダイエットして「腹筋を得ている」し。それでも目鼻立ちに面影があるキャスティングがなされています。
みんな社会的には成功していて、それが何気に凄いと思いました。
ハッピーかどうかは別として、全然「負け犬」なんかじゃない。
ビリーは完全に原作者のキング自身の投影なのでしょうけれど、そんなキングがカメオ出演してビリーとの絡みがあるお遊びも観ていて楽しかったです。
それと、カメオ出演といえば冒頭のグザヴィエ・ドラン。
チョイ役なのに激しい場面で大変だったんじゃないですかね。

ちなみに、子供時代の場面はどれもノスタルジーにあふれていて良かった。
秘密基地に「ロストボーイ」のポスターが貼ってあったり、懐かし玩具のバンバンボールが出てきたり。
個人的にバンバンボールでは随分と遊んだ思い出があるので余計にノスタルジックに浸れました。


総じて、怖さはそんなになくても愉快な作品でした。
尺が長いので疲れる方もいらっしゃるかもしれませんが、例えばデートで観るなら適した映画だと思います。
尺が長いということはそれだけコストパフォーマンスに優れているということですし、何より手を握ったりするチャンスが増えますからね。
というわけで、付き合い始めたばかりのカップルや、もしかして付き合うかも?といった段階の男女にオススメの、アミューズメントパークみたいなアトラクション映画でした。

余裕でおひとりさま鑑賞しましたけれど!
B級ホラー映画でも躊躇なく付き合ってくれて、貧乏なお年寄りにも優しい女性、募集中です(笑)!


劇場(シネプレックス平塚)にて