kanaco

ファウストのkanacoのレビュー・感想・評価

ファウスト(1994年製作の映画)
3.3
かの有名なドイツの【ファウスト伝説】を監督独自の解釈+実写とストップモーションアニメを融合させた手法で映像化。相変わらずシュールでグロテスク、フェチズムを感じる世界観で気持ち悪い。でもなんかクセになる。何かを象徴するような奇妙な映像が続く。いつもより「コント色」が強かった気もする🤔(141文字)

****以下ネタバレあり&乱雑文****

◆あらすじ◆
駅で配られていた謎の地図に導かれた〈男〉が辿りついたのは、地下が劇場になっている古く不気味な建物だった。中に入った〈男〉は楽屋に置かれていた衣装に着替え、ボロボロになっている台本【ファウスト】のセリフを読み上げる。「俺は哲学も医学も法学も底の底まで研究した おまけにやくたいもない神学まで究めた だが愚かな俺はこのとおり 少しも賢くなっていない 何ひとつ手に入れず 誰にも評価されない だから俺は世を捨てて 黒魔術と錬金術に身を捧げる」そして〈男〉は〈ファウスト〉として魔術を行い悪魔メフィストフェレスを呼びだす。そして「あらゆる官能の喜び」「味わったことのない悦楽」「あらゆる問いへの全ての答え」を得るのと引き換えに、24年後に魔王に魂を渡すという契約を結ぶが…。

❶【ファウスト伝説】を監督独自の解釈と手法で映像化

ドイツの有名な【ファウスト伝説】—学者として成功するも人生に満足できず、自分の魂を代償として悪魔と契約し、現世での知識と幸福を得たファウストという男の物語—をチェコのアニメーション作家/映画監督のヤン・シュヴァンクマイエルが独自の解釈で制作し映像化したもの。

私、【ファウスト】っててっきり戯曲家のゲーテが0から創作したものだと勘違いしていたのだが、そもそも古くから伝説があり、16世紀頃には演劇や人形劇などで流行って先に戯曲などが作られており、そのかなり後にゲーテが再編してさらに有名になったという形なのですね~。知らなかった😥

今作の【ファウスト】はゲーテの物語とは展開や解釈が違うため、ゲーテら先代の作品の影響を受けながら、大元の【ファウスト伝説】を監督が得意の手法で再編したという見方でいいのかな?【ファウスト伝説】の映像化だと考えると、本映画のストーリーラインは伝説から逸れることなくほぼそのままだと思った。ストップモーションアニメの部分が人形劇の様相をしているのもそこが影響しているのかなと思う。

❷お馴染み、実写とアニメを融合させた独特すぎる世界観

監督でお馴染みになっている、実写とストップモーションアニメを融合させた手法がとられている。いつも通り独特で気持ち悪くて、言葉での説明は少ない。お話を楽しむというよりは、個性が溢れていて次の一手が想像できない、不気味な映像を楽しむといった感じ。

相変わらずの「体パーツの執拗なアップ、不快音、不衛生さを感じる食事、生理的な嫌悪感からなるグロテスク、フェチズムとエロチシズム」節がさく裂。でも、ストーリーが【ファウスト伝説】のラインからそんなに外れないためか、私が他に見た【アリス】【オテサーネク 妄想の子供】よりはその「クセ」が抑え気味だったように見えた…かな?いや、他の二つに比べてなので、本作も「クセ」は強いのですけどね…。

また【アリス】【オテサーネク 妄想の子供】もそうだったが、それら以上に「コント色」が強かった気がする。メフィストフェレスさんを呼び出すための「お決まりの工程」が多すぎて大変すぎるな😂とか、「ピルケ」「パドルケ」の問答、どれだけ天丼するのさ🤣とか、悪魔の鳴き方👿「prrrrrrr」が独特すぎる🤣とか。そもそも、上映時間が96分しかないのに契約するまでに1時間以上かかるのすらなんか面白くなってきちゃった。

あと、「片足」のおじさんが気になった~あの人はつまりどういうこと?あるシーンで一番「あ!」ってなったおじさんだった🤔

📖🐝「ゲーテの【ファウスト】は大学生時代に読もうとして数ページであっという間に挫折したため、知識が全然なかったので本作はちょっと勉強になりました。相変わらずシュールでグロテスク、フェチズムを感じる世界観。何かを象徴するような奇妙な映像が続きます。でも、この監督の作品を3作も見ていると、これがないと監督って感じがしないものなぁ~と思うくらいには教育されてきました😂」
kanaco

kanaco