KUBO

迫り来る嵐のKUBOのレビュー・感想・評価

迫り来る嵐(2017年製作の映画)
3.6
今まさに台風が来るというその日に「迫り来る嵐」を見てきた(^^)。

昨年の東京国際映画祭のコンペティション部門で唯一ソールドアウトで見られなかった作品。一年越しでやっと鑑賞できた。

1997年、中国の地方都市で起きた連続女性猟奇殺人事件。事件を追うのはこの街の工場の警備担当のユイ。

警察の捜査になぜ「工場の保安部」の人間が関わるのか、その辺のところは中国の事情を知らないからよくわからない。また、ここで手柄を立てれば「公務員」になれる、とか言う事情も中国ならでは。

ポケベルだとか、1997年であることは確かなんだが、街は日本なら昭和30年代くらいの寂れ方。高度成長前の中国、いや地方都市なら今でもこんなもんか?

雨、雨、雨。この映画の魅力は、雨と泥と色のない街。その雨の降る街を、タバコを燻らせ、コートの襟を立てて歩くユイ。その彼を追うカメラが、雨の工場をとらえた映像が素晴らしい。中国ノワールというか、ハードボイルド調の空気感が心地いい。

色を唯一感じさせるのが、ユイが心を寄せる娼婦イェンズ。店を持たせ、入れ込むが、身体には触れないユイ。だが、このイェンズとの出会いが捜査を以外な方向に…

ダイイング・メッセージがあるとか、何か暗号が残されているとか、安っぽいミステリー要素は一切なし。張り込み、聞き込みが基本のまさに泥くさい捜査だが、雨と雲に閉ざされたノワール感が美しい作品。

昨年の東京国際映画祭で「最優秀男優賞」と「芸術貢献賞」をダブル受賞した本作。確かにサスペンスだけどアート。一般公開は来年1月、しばし待たれよ。
KUBO

KUBO