南森まち

僕の帰る場所の南森まちのレビュー・感想・評価

僕の帰る場所(2017年製作の映画)
4.3
東京に住むミャンマー人夫妻が二人の息子と一緒に1Kのアパートで暮らしている。夫アイセは居酒屋、妻ケインはクリーニング工場で働いており、幼い頃から日本で育った兄弟は日本語を使って周囲の日本人と同じように育っている。そんなある日、夫は入国管理局に連れていかれて収容されてしまう。一時帰宅はできたものの、指摘されて提出した難民申請は認められない。まったくミャンマー語を話せないまま育っている子どもたちを見て、妻ケインはつぶやく。「すっかり日本人みたいね。二人の将来はどうなってゆくのかしら…」そして彼女は不眠症が悪化し倒れて入院してしまい、政情不安定なミャンマーへの帰国を考え始めるのだが…というお話。

ドキュメンタリーではないが、物語の9割が実話とのこと。
序盤は母親、中盤は父親、終盤は長男の視点に変わっていく。主観の変更とともに、問題が
難民認定→移民一世と二世の確執→帰国した移民二世の孤立と移り変わっていく。

映画としては、終盤の主人公である長男役の俳優さんがめちゃくちゃ演技がうまい。
最初イキイキしていた少年が、置かれた境遇に絶望しながらグッと我慢して、目だけ大人になっていく姿にゾワッとさせられます😭

日本の政治的な問題を論点にした映画ではなく、ある家族を描いて世界中の移民全体が直面する問題を描いている。多くの国で賞を受けているのは、世界中で起こっている問題のため外国の方にも理解しやすかったのだろうと思う。
藤元明緒監督の作品にはこれからも注目していきたい。

2022年4月16~22日に、ポレポレ東中野ほか全国18館の劇場で『白骨街道 ACT1』と同時上映で公開。配給収益の一部と、設置した募金箱への協力金は、ミャンマー市民を支援する活動に寄付される。