このレビューはネタバレを含みます
【で?】
今、奥さんの職場(日本語学校)の生徒さんは、中国、韓国に混じって、ネパール、ミャンマーからの生徒さんが目立つらしい。かつてはアウンサンスーチーさんの国として、近年はロヒンギャ問題などでも注目を集める国ミャンマー。
そんな話題を耳にする中、ミャンマーからの移民、難民のいち家族を追ったドキュメンタリータッチの映画が『僕の帰る場所』だ。
物語の背景には、国家、民族、宗教などに関わる大きな問題が横たわるけど、それらはボカしたまま語られる。が故に、むしろ家族の、親子の普遍的なお話となっている。
久しぶりのポレポレ東中野での鑑賞。らしい作品ラインナップだなとは思った。
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(ネタバレ、含む)
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今、話題になっているということを体感するために鑑賞。家族の物語として観れば、親の都合で振り回される子供たちの不憫さ、それでも健気に生きようとする様に涙誘われる(客席からのすすり泣きも聞かれた)。
小さな兄弟たちが、演技とは思えない真に迫った感情を吐露するシーンは印象深い。帰り着いたミャンマーで、ようやく学校に通えることになった弟を見て、「ここなら安全」と呟く兄。子どもが「安全」か否かを意識しなきゃいけない暮しは、やはり悲しいものがある。
とはいえ、そうした問題提起を、すわ移民、難民問題に結び付けて描こうとするのはどうなんだろうと思うところ。
本作品でも、冒頭、日本で恐らく不法滞在として収監されている父親の存在が描かれ、難民申請が容易に受理されない日本の現状、お役所の冷たい対応等をその後も幾度となく冷徹なトーンで描く。
劇場に掲示された様々なメディアで取り上げられたレビューや識者のコメントにも、やれ昨年の日本の難民申請の認定率が0.3%未満だ、かたやドイツはン十万人を受け入れたとか、フランスは、イギリスは、という論調が目立つ。
そういう問題提起の作品なのだろうか。
難民問題は国際的にも大きな問題だとは思い、これまでも『DAYS JAPAN』の主催するシリア難民の写真展や、困ったMさんのトークショーに足を運んだりもしてるが、正直、イマイチ、ピンとこない。じゃぁ、日本じゃなくて、申請の通りやすい国を目指せばいいのに。いつも、それしか感じないのは、まだまだ勉強不足なのだろうか。
この映画も、日本で難民申請が通らない夫を見限って、妻は子供を連れてミャンマーに帰る。子どもは祖国に馴染めず、スマホを通じて「日本に帰りたい」と日本に残る父親に泣きつく。
日本にいた時、嫁は夫に「なぜここ(日本)に居なくてはならないの、祖国へ帰ろうと」訴える。国に帰れば、今度は子供たちが「ここ(ミャンマー)ではなく、日本に帰ろう」と泣き叫ぶ。それぞれが「帰る場所」を求め彷徨う。
背後には恐らく、反政府活動をした等で、国を追われることになった父親の行動があったのだろうが、映画ではそこを敢えてボカしているが故に、この家族に対して何を思えばよいのだろうとモヤモヤしたまま見終わってしまった。
難民申請、貧困、民族・宗教問題、そんなもの以外でも、いくらでも親子で一緒に暮らせない家族はいる。普遍的な物語にしてしまったが故に、子どもたちは不憫だとは思うが、「だから?」としか思えない。子どもの泣き声がオーバーラップするエンドロール(ちょっと悪趣味)。「で?」(どうするの、親として?)と、大人の事情にツッコミを入れたくなるのだった。
多分に、この作品を語ることで、難民問題や、日本とミャンマーなどの途上国との関係性に物申したいとする周りの態度に辟易するものを自分が感じるが故なのだとは分りつつも、難民問題に絡む作品は、素直に作品の本質を見ることが出来ない。