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シリアにてのNMのレビュー・感想・評価

シリアにて(2017年製作の映画)
2.7
起承転結のあるストーリーというよりは一日の切り取り。立てこもり生活のなかで特に出来事の多かったある日の。
これはこれで良いと思った。戦争は必ずしも何かが何かに帰着していくというよりただただ日常を破壊する、という現実味がある。

描かれるのは前線に出た男たち「以外」の様子。

妻は何より子供たちを守らねばならない。そのために他人が犠牲になるのを見過ごさなければならないことも。
夫の帰りも待たねばならないが、夫が無事なのか自体不明なまま毎日を過ごさねばならない。
ここは私の家、とか、夫なしではどこにもいかない、と宣言するときは相手が誰であれつい顔に力がこもる。

父はもう年なので体を張って家族を守ることはできない。自分が若かったらという苦しみがあるだろう。自分が代わってやれたらという思い。
そして愛する息子を失うかもしれない、もう失ったかもしれないという恐怖を日々噛みしめる。

子どもたちは一方的に被害を受けるのみ。ときおり他人が傷つくのを見つめなければならない。本当なら子どもに受け止めさせるべきではないこと。

彼らは家族で立てこもっているので、絶対に失敗できないチーム戦のようなもの。むしろ前線に出る戦士なら戦功のため蛮勇すらゆるされるかもしれないが、彼らはそうはいかない。自分の思いは二の次、チーム全体の利益を最優先して被害を最小限にしなければならない。

勇気を持って他人を守ってもその対価が得られるわけではないし結果が出るとも保証もない。感謝されたところで気が晴れるとも限らない。戦争の無情さ。
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