わたふぁ

アスペルガーザらスのわたふぁのレビュー・感想・評価

アスペルガーザらス(2016年製作の映画)
3.8
自虐ネタを笑いにするアスペルガー症候群の4人組「アスペルガーザらス」。3年続けたお笑いユニットの解散ライブの開催とその後に密着している。“Asperger’s Are Us” は文法的には間違っているが“アスペ流のユーモアを反映した名前”と自己紹介している。

⚫︎髪を切られながらギターを弾き、歌をうたっているのはノア。半音下げのチューニングと低音の歌声が妙。これぞまさしく「FRANK」だ、と思った。彼はコメディだけでなくミュージシャンとしても活動中。(今作の挿入歌もとてもいい)
⚫︎マサチューセッツ大学で脳の研究をされたことを自慢するのはニューマイケル。以前アーロンという“奴隷名”を持っていたそうで、お父さんはオールドマイケルで自分はニューマイケル。スキンシップはあまり好きではないが、父親が想ってくれていることは知っている。
⚫︎他の3人よりは環境の変化にデリケートそうなイーサン。大人しいけど一番ブラックな笑いの持ち主かも。電車オタクで時刻は正確に言えるけど、満員電車は大キライ。
⚫︎そしてちょっと早口なジャック。彼は「アスペルガーの人は全力で走るか、歩くかのどっちかで、全力を注がないで走るジョギングというのは難しい。理解はできるけどストレスになる」と話していたのが印象的。ジョギングが受け入れ難い、らしい。

ノアが少し年上で、3人が17歳のときにチームを結成した。20歳を過ぎて、ライブの成功はもちろんだけど、その先の将来の不安も無くはない。

4人が共通するのは、子供の頃から人を笑わせることが好きだということ。そして、自分たちでゲラゲラ笑い合う時間が大好きなんだと思う。
彼らのコメディに関しては、私は元々アメリカンジョークがよくわからないし、彼らのネタの笑い所もわからなかったけど、会場のお客さんは笑っていたし、何よりお忍びでライブに来ていた家族からのあたたかい拍手と眼差しが印象的だった。

彼らは、他人にどう思われるかとか、こんなことしたら恥ずかしいとか、もう大人だからちゃんとしなきゃとか、ちゃんとって何だ?とか...余計なことはあまり考えない。邪念がない。
逆に言うと、(おそらく)定型発達であろう私たちが大なり小なり何かモノをつくる時に、どれだけ多くの邪念にまみれ、考えすぎて、自分自身でがんじがらめにして自由な発想を失っているのかと思うと、ちょっと絶望する。
毎日好きな格好をして、好きなように暮らしていたいと思った。誰かに好かれる (嫌われない) ためではなく。