彼の長年の夢が叶った部分は知っていたのに。彼だけが、その夢の光景を見ずにいってしまったとは知らなかった。
オフ・ブロードウェイからブロードウェイへの進出、トニー賞最優秀賞の受賞、割れんばかりの拍手喝采、連日の満員御礼、その後の12年間のロングラン上演。それから、掴めたはずの豪華なタワマンでの夢の暮らしも。
それらを見ずに、その夢の前夜に、、、とは。
まあ、絶対に成功する未来は彼にははっきりと想像できていただろうから、悔いる必要もないのだろうけど。
52万5600分。チック、タック、チック、タック、、
一年という時間を分数で表した数字。一度聴いたら忘れないほどキャッチーなメロディでもって「RENT」で擦り込まれたその数字は、彼の人生の一端を知った今、より重く切実に訴えてくる。
この1年、いやこの2年、どれだけ大量の分数を捨ててきたかわからない。まだ生きているのに、死んだように生きてきた自覚がある。
もうお腹いっぱいというほど自粛と堕落をしたし、文句も散々言ったし、そろそろちゃんと「有限の時間」と向き合い直さなければと思う。感謝。
