トシオ88

鍵のトシオ88のレビュー・感想・評価

(1959年製作の映画)
4.4
文豪谷崎潤一郎の作品を、市川崑監督、撮影宮川一夫が映像化した名作。静謐でありながら異常無比な内容は観終わったあと、観た人に嫌な笑みと口の中に何だかザラザラしたものを残す…☠️

研修医役の仲代達也の皮肉めいた老衰に関する独白の後、ぬるぬると始まる本作。舞台が京都であることを示すのは、市電と遠景のショットのみ。あとは、ほぼ四人の主役の舞台劇のような芝居が続くが、脚本と撮影の巧みさ、そして何よりも演技巧者の俳優たちの演技がこの映画の真骨頂。

人間国宝二代目中村鴈治郎、京マチ子、仲代達也、叶順子、四人の演技は、そのまま能面に付け替えてもおかしくないほどに無表情でありながら、でも実は情緒に富んでいて、観ている側の脳髄をチクチクと刺激する。そして隠し味の名バイプレイヤー北林谷栄の存在も…☠️
時々インサートされる宮川一夫のサブリミナル的な竹林の蠢き、機関車の連結、指の動き、そして秘密めいた瞳の所作等、芸術的なカットが観るものを惑わす☠️
市川崑監督はまだ当時40歳代前半であったことを思うと、やはり監督として、とてつもない才能の持ち主であることがよくわかる…。

叶順子は女優としての活躍した期間は短かったけど、その怜悧な美貌で後年もっと活躍できたかと思うと残念😔
今から60年以上も前の京都を舞台にしたドラマだけど、その中に詰まっている欲望や嫉妬や憎しみや皮肉や本音と建前は今も変わらないし、これからも変わらないだろうな☠️🎬
トシオ88

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