わたP

ファントム・スレッドのわたPのレビュー・感想・評価

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)
4.5
完全に変態の映画だった。
この映画の音楽を担当してるジョニー・グリーンウッドのRadioheadの曲にparanoid androidという曲があるのだけど(詳しい人にとったら名前出すのも恥ずかしいぐらい所謂エモいやつ)、その歌い出しが、「頭の中で生まれてない鳥が鳴っているような音がして止めてほしい、早く休みたい」的な歌詞なんですけど、自分には生きづらい世の中を嘆いてる曲で(つうかRadioheadはだいたいそんな曲ばっか)まんまこの映画の主人公みたいだなって思いながら見ていた。他にもグッチのバッグを持った豚とか歌詞に出てくる(完全にバーバラさんを想像)

つまり主人公は食事の音さえ、世界のすべてが完璧でないと気が済まない完全な偏執狂の完璧主義者で、それ故に苦しんでいる人物として描かれる。そこに自身が求める完璧な体を持った女性が現れて、生活と仕事を共にしていく。というストーリーになるのだけど、僕は最初見終わったあと、この女性がこの偏屈な男の愛をかなり強引な形で(これもまためちゃくちゃ変態的)獲得する話だと思った。もちろんそういう話だし、それがメインのストーリーなんだけど、改めて思い返してみると、主人公が最初に書いたような苦しみから開放されるための話でもあるんだなあと感じる。
だってダニエル・デイ=ルイスこれで引退するんですよ!?つうかこの主人公、完全にダニエル・デイ=ルイスそのものを想像させて、ダニエル・デイ=ルイスも完璧な役作りを求めるイメージだし、靴職人やってたし、なんか気難しそうだし、考えるほどダニエル・デイ=ルイスがもう俳優辞めたくて最後に救いを求めたように思える。
さらにはどうも主人公がポール・トーマス・アンダーソン自身にも見えてきて、同じく完璧主義の芸術肌って感じの監督が、自分が求めるものを作るための苦悩を吐露してるようにも思えてならない。(と思ったらパンフレットのインタビュー読むと、監督は引退すること知らなかったみたいだからたまたまかも)
印象深かったのは劇中で「正しいものは正しい」と自分や姉の価値観を絶対に信じて疑わない主人公のセリフがあって、それは監督自身が自分が作っている映画への自信と、売れる映画、好まれる映画との乖離に対する一言のようにどうしても思ってしまう。
でもこれってめっちゃわかりません?ある程度映画見てるよ正直良し悪しとかあるじゃないですか?それを全然映画見てないやつに「まあ好みあるから」みたいな感じで片付けられたらめっちゃ腹立ちません???うるせえわ!お前の見る目がないんだよ!!ってすっげー思うんですよ。すっげー性格悪い。

まあそんな感じでものすごい情緒不安定な文になりましたけど、めっちゃいい映画です
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