やすやす

漂流ポストのやすやすのレビュー・感想・評価

漂流ポスト(2018年製作の映画)
4.5
捉えどころの無いタイトル、何の変哲も無い
ジャケ、そして30分という短い時間。
だけど今作には映画としての魅力がギュッと
凝縮されている。極めて私好みの作品だった。
タイムカプセル、手紙、校舎の屋上、海辺、
戯れる儚げな少女達…静かなピアノと共に映
し出される光景にうっとりさせられ郷愁をそ
そられた。全てが美しい。全てがエモい。

これは震災で親友を失った一人の女性の物語。
だけど彼女と同じ様に苦しんでいる人は数えき
れない。突然断ち切られた友情、絆。
「もっと優しくしていれば」「もっと話してい
れば」後悔の念はいつまでも消えることはない。
事故や犯罪に巻き込まれ亡くなったなら加害者
を恨むことで自身を正当化することも出来るだ
ろう。
しかし震災であれば怒りの矛先は自分自身に向
けられてしまうのかもしれない。
失なわれた多くの命の陰で膨大な人達が今なお
辛い日々を送っている。今作はその事実をあり
のままに伝えてくれる。

二人が出会った時の秘話が静かな感動を呼ぶ。
亡くなった友をいつまでも大切に思う気持ち。
これほど尊いものはない。人間って素敵だって
改めて思わされる。
見終わって余韻が凄すぎて繰り返し見てしまっ
た。
出来れば劇場で体感したかった作品です。
やすやす

やすやす