まめまめちゃん

暁に祈れのまめまめちゃんのレビュー・感想・評価

暁に祈れ(2017年製作の映画)
4.5
タイトルもカッコイイし、ポスターのジョー・コールの傷だらけの表情もイイ!
予告編を見て若干日和りましたが、それでも絶対に劇場で見ると決めてました。昨年の作品がようやくいま公開してる田舎ではありますが、待っていた甲斐がありました。
怒り→焦り→充実感、また別の怒り→焦り→ストレス、そして何かを確実に掴んだ充実感といった緊張と緩和の緩急。マンネリしそうになりながらも持ち堪えるのはやはり、刑務所とムエタイというスポーツの凄まじいエネルギーじゃないだろうか。

主人公のビリーは、タイにやって来たイギリス人のボクサー。ですがとにかくメンタルの弱い男。
ちょっとした挑発にも、そこまでやらんでいいのにと思うほどにキレて人を傷つけて、その度に立ち上がれないほど後悔する。「自分の弱さに打ち勝たなければ前に進めない」ということを、この映画のほぼ9割ほどを使って表現されます。
ちょくちょくそのあまりの沈みっぷりに嫌気がさしてくるのだけど、おかげでようやく掴んだ光がとっても眩しく見えてきます。

他の方のレビューにもありますが、この物語の舞台であるタイの刑務所はこの世の果てとはこのことと思うばかり。朝起きたら隣で誰かが死んでいたり、首を吊っていたり、何をするにも「袖の下」が必要だったり、基本洋服がなかったり。それでもあの豆腐メンタルな主人公が流されて流されて尚立ち上がれたのは、意外にも今話題の映画のテーマでもある「父と子の関係」ではなかったか、それとも勝たなくては本当に殺されそうな刑務所だったからなのか。

ラストシーンは実にさりげないのですが、良い着地だったと思います。間違いなくおススメです。