まめまめちゃん

万引き家族のまめまめちゃんのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.5
機能不全家族とか親ガチャとか毒親とか経済格差増大とか、なんなら富裕層まで叩き落とす勢いの政権の中、これから家族つくろうと思う人にとってはマイナス要因に溢れた世の中。「万引き」してきた疑似家族なら幸せになれるのか?是枝式チャレンジ物語。「ベイビーブローカー」を先に見ちゃったから、疑似家族ものが好きなんだなあ監督とまず思った。

家族の不労所得=祖母の年金。
生活用品も食料品も盗む。
部屋はなぜか物で溢れている。
可哀想な子供を黙って連れてくる。
仕事がなくて、学校がなくて勉強がなくて、テレビもネットもなくて、
そのおかげで自らの全ての間違いを子供たちの前でさえも無理くり正当化するこの生活が、本当に本当に幸せなのだろうかと少し考えればわかるから、あえての思考停止家族なのだ。
皆を無理くり結びつけていた存在がなくなって初めて時が流れ思考が始まる。

正直私がここの皆がいう「絆」を感じたのは、祖母(樹木希林)と孫(松岡茉優)の間くらいのものだった。
結構序盤の方からこの疑似家族の甘ったれた関係にイラつき始め、あのどう考えても聡い子供にまで思考を止めて欲しくなくて焦れていたので、後半の展開にはなかなか痺れた。
本当の正しさを信じた彼の疾走シーンは十分にインパクトがあり、起承転結の「結」に至る「転」としての機能を果たしていたと思う。
児相とか警察とかマスコミの言葉は上っ面という皮肉をのぞかせる演出も良かった。

貧困がこの悪循環を生むのはよくわかるんだけども、悪循環を全て貧困のせいにするのは私は好みじゃないんだとわかった。傷ついた時には休むことも止まることも必要だとは思うけど、皆が正しい場所に居て心穏やかに前を向いて生きる選択ができるといいなと心から願う、2024年の年始だった。

仕事始めの前には胸糞映画をと思って選んだのに、そんなことなくてちょっと残念。