白人ボクサーがタイの刑務所に収容されてしまう話。
言葉の伝わらない異国の刑務所というだけでも嫌なのに、狭いし、暑苦しいし、しかも周囲は全身タトゥーの凶悪犯だらけ。
映画の前半は、この地獄としか言い様がない刑務所の様子が延々と映し出される。
タイ語の字幕が出なかったり、主人公に接写したカメラワークによって、観客もまた主人公と同じ状況を追体験させられる事だろう。
あまりにも強烈な出来事の数々に、私自身、この前半部分を見るだけでもグッタリとさせられてしまった。
そして、後半からは主人公のムエタイとの出会い、更生が描かれていく。
周囲とまったく馴染めなかった主人公が、周囲を受け入れ、受け入れられていく展開が感動的だ。
喧嘩したスパーリング相手に謝罪を言うシーンがあったが、おそらく彼は自分自身を…自分の弱さや過ちを受け入れたという事なのだろう。
修学旅行の中学生の様に、仲間達と枕投げをするシーンが微笑ましい。
本作を見てると、人が更生する為には、何か打ち込めるものが必要なのだと思わされる。
また、自分の事を受け止めてくれる存在も必要になるのだろう。
それは何も受刑者だけに限らず、我々一般人にも同じ事が言えるはずだ。
台詞数も少なく、物語らしい物語もない作品だが、それだけに感覚や感情が揺さぶられる作品である。