純

名探偵コナン ゼロの執行人の純のレビュー・感想・評価

3.8
スピード感の緩急がすごい。落ち着いてきたなあと思うと急に加速するから、二転三転ノンストップ!というテンポを大事なところに全部詰め込んだ感じだった。偏りすぎずに一人ひとりに見せ場を用意してくれている丁寧さを感じつつ、物語の尺的に飽和している印象も少しあった。とは言え、毎年新しい試みを形にしているのは本当にすごいことで(極端だったり結果がイマイチだったりしてもね)、最新作がこれまでどれひとつとして過去作品の二番煎じになっていないところが、昔も今もこれからも人気な理由なんだろうな。繰り返すものは新しい。最近読んだ詩集に似た言葉があったけど、本当に何度観ても新しさがあるものはひとを手放さないね。

動機に関しては昨年のほうがまとまっていたように思うけど、解決までの見せ方だとか情報量の多さだとかでレッド・へリング的要素は今作の方が強かった。ミステリ好きの層は例年より楽しめたのかなあと思う。でもちょっと難しいね。公安ってあんなにややこしいのか!って私も驚いたし、情報を整理しながら観ていかないと内容の理解追いつけないままアクションのスピード感にかっさらわれちゃう感じだった。まあこれは私の脳みその回転が遅いからだとしても、専門用語が多すぎるがゆえにちびっ子たちは更に置いてけぼりにされてしまったのは…と少し心配。警察庁?警視庁?送検?って蹟かずに、「うおー!アクションかっこいいー!」って夢中になってくれたなら良いね。何を楽しむかは鑑賞者の自由だし、どんなに周りにひとがいてもスクリーンと自分の一対一で作品を味わえるのが映画の良いところだし。

まあだからこそ色んな要素をぎゅっと取り込んだ感じの作品になってるんだろうなとも思う。大人から子どもまでっていうと作品に期待するものも変わってくるし、好きなところがそれぞれ違う鑑賞者たちをなるべく100%楽しませたいってなると挑戦いっぱい要素いっぱいになるもんね。端的に言ってアクションはとにかく半端なくて明らかに人間離れしてるし、安室さんの見せ場のうちわかりやすいほどファンサービス的な台詞もあるし、前述したように硬派な設定にもしていたし(映像が少しサスペンス色強いところあったよね?私が子どものときに観てたら少し怯えていたかもしれない…)。どれもお互いを隠さず消さず、程良く主張していたから何よりかも。

それにしてもアクションがすごい。すごいって言葉でまとめてしまって良いのかなって不安になるくらい(笑)安室さんもコナンくんもお互いに「すごい」って賞賛してたけど、あのレベルまでいかないとすごいって言えないなら誰もすごくなくなっちゃう(笑)安室さんが出る作品ではカーチェイスでいつも魅せてくれるんだなということを再認識したから、これからも楽しみにしていこうと思う。あとは去年の平次に引き続き野生的な光を放つ眼が印象的だった。いつもクールだったり穏やかだったりするひとだからこそ、ああいう一か八かの勝負に出る興奮たまらない、みたいな一面に心を鷲掴みにされちゃう子が続出するのかな。映画ならではの特別感はずるいねえ。

個人的に好きだったのは、哀ちゃんの少年探偵団への優しさだった。怯えさせたりプレッシャーを感じさせたりはしないで、でも子ども扱いせずにきちんと信頼して任せてくれる。なんて良いお姉さん…。哀ちゃんも丸くなったなあと感慨深い。元々こういう淡い優しさを持ち合わせた子なんだろうし、だからこそぴったりの名前だなあと思う。別に哀しいことを背負っているからなんじゃなくて、哀しい思いを誰よりも知っているから、大切な他人にはそんか思いをさせないようにしようって気持ちを大事にできるひとだもんね。話が少し逸れたけど、今回は子どもたちも全員見せ場を与えられていて、幼いながらに頼もしく、でもやっぱり溌剌とした健やかさが素敵なやわらかさを生んでいたと思う。

手薄だったのは蘭ちゃんのカバーかなという感じだけど、今作のときめきはとりあえず安室さんに譲っておく形で良いのかな。まあ何はともあれ、何で隣のひとは笑わずに観られるんだ?!って騙された気持ちで肩震わせてたなりに今年もめいいっぱい楽しめて良かった(笑)
純