このレビューはネタバレを含みます
佳作。結構面白いのだが、「二人が半径15m以上離れると男の周りが全員即死する」という設定が良すぎるあまり、そこに過度な期待をすると肩透かしをされる作品。この設定はあくまで本作のエッセンスにすぎず、メインは別。紛らわしいことに、本作はSFではなくサスペンス映画である。
「上記の状況だし男はとても実直で優しくて命の恩人だし、ずっと男の傍で生きていく覚悟を決めた→この男は記憶を失った連続殺人鬼であり姉の仇だった」というのがラストに用意された筋書き。全てがひっくり返るこの展開は見事と言う他ない。そしてオチは「女を病院に入れるために、もう誰も死なせないために自殺する」というもの。因果応報でもあり、全てが収まるところに収まる。素晴らしい。
演出も無駄がなく、台詞による説明を極力抑えているのもとても良い。二人ともが記憶喪失になっているという前提の活かし方が上手く、女に夫がいるために安易な恋愛展開にも走らない。脚本が上手い。
ただやっぱりとにかく設定が秀逸すぎるので、この設定をメインに据えた別の話も見てみたくはなってしまう。
