TAK44マグナム

スパイダーマン:スパイダーバースのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

5.0
運命を受け入れろ。


まだ何者でもない少年、全てを失ったヒーロー、聡明な美少女、白黒世界のハードボイルド、カートゥーンのブタくん、ロボット乗りの萌えキャラ・・・
パラレルワールドのスパイディたちが結束したスパイダー戦隊が、キングピン率いるヴィラン軍団と世界の崩壊をかけて激突するハイパー・イマジネーション・ムーヴィー!

とんでもない!
見たこともないグラフィカルなビジュアルが全編だだ流れ!
語彙力がなくて申し訳ないが、素晴らしい!
凄い!
驚嘆した!
アメコミをアニメにしたのではなく、アニメをアメコミ化したかのような斬新すぎるイメージ!
フキダシ、効果線、etc.
タブー無き映像表現の極致!
まさにアメージング!
できれば、可能な限りIMAX3Dで鑑賞して頂きたい、このゴージャス極まりない映像革命を!
とにかく物凄すぎて、これは観てもらわないと伝えられない。
あらゆる点で既存のCGアニメを遥かに凌駕した、驚愕必至のセンス・オブ・ワンダーがスクリーンを異次元へと変えた!(かのように見えた)

もちろん、いかに映像やサウンドが優れていようとも、それだけではオスカーはゲットできない。
心の琴線を大いに刺激する物語が、そこに紡がれていた。

これは1人のヒーローの誕生譚であり、それだけを抽出するなら、よくある話で終わってしまう。
だが違う。
主人公はガキ扱いされる少年であり、いくらスーパーパワーを得たといってもまだまだ子供なのだ。
世界を救う約束をスパイダーマンと交わしても、巨大な敵に立ち向かう勇気を最初から持ち合わせているわけではない。
誠実だが、それだけでは悪に立ち向かえはしない。

そこで、彼にヒーローとして必要なものが何かを教える導師が必要となる。
少年を導き、時には背中をおす役割を担うのは大人である。
それは、かつて自らも同じ悩みを抱え、やはり導師から経験を得ているからだ。
人は伝えられ、それをまた次世代に伝えてゆく。その繋がりの中で生きている。
つまり、この物語は少年と同時に、その少年を導く大人も描いている。
その大人もまた完璧などではなく、傷を負っている。
そこが良い。

そして、「とぶこと」を教わった少年は、一歩を踏み出す。
それは未来への一歩。
別にヒーローになるためだけではなく、どんな局面だろうと飛びださなければならない時が何度もくるのが人生なのだ。

思えば、平井和正と池上遼一コンビによる日本のコミック版スパイダーマンの主人公には、導くべき大人がいない。
だから、最終的に彼はヒーローでいるよりも、ただの傍観者でいることを選んでしまう。
導師がいないということは不幸であり、孤独であるのだ。
しかし、本作の主人公は決して自分が孤独ではないことを知る。
だから最後まで戦える。
真のヒーローとして。


本作を是非、彼と同じ世代に観て欲しいと願ってやまない。
現実の世界は、コミックよりも理不尽であり、厳しい。
恐ろしい悪意にも満ちている。
そんな世界を、少しずつでも良い方向に変えてゆくためには次世代の力が必要だと思うからだ。
自分たちが生きる世界を、より良いものにしてゆくために何が必要なのか。
その答えの一端が、本作を観ることで垣間見えるだろう。

悪をくじくヒーローたれ。
では、ヒーローとは何か?
スパイダーマンをクリエイトした1人であり、偉大なる人生のマスターであったスタン・リーの遺した言葉が、まさに唯一無二のアンサーだと思う。
その言葉は本作の最後に提示されるので、是非とも「人は誰もがヒーローになれる」というテーマと共に胸に刻みつけて欲しい。
とりあえず、電車でお年寄りに席を譲る。そこからでもOK!

大切なのは、ヒーローへの一歩を踏み出すことで、それには勇気が必要だという事。
若い世代も、親世代も、どちらの立場からでも共感できる、非常に優れた作品であることは疑いようがなく、だからこそアカデミー賞長編アニメ映画賞の受賞という結果を残せたのだろうし、まったく異論の余地がない。
度肝抜かれる映像に浸りながら、何度も心の中で最高!と叫んでいた。


最初から最後まで隙がなく、エンドロールも、更にはエンドロール後のオマケも大充実しているので、本編が終わったからといって席を立つのは勿体ないと、付け加えておく。
ありとあらゆる面で最高だった。
また、彼らに会いたいし、出来るなら東映版スパイダーマンとレオパルドンにも今度こそスクリーンで会いたい。
本作は何の迷いもなく五億点だが、もしこのレベルをキープしつつレオパルドンも活躍させてくれたら500億点はくだらない、史上最高のスパイダーマン映画になるだろう。

最後に、個人的に最も気に入ったキャラクターは、モノクロの世界からやってきたスパイダーマンノワール(声はニコラス・ケイジ)。
色を合わせないとならないルービックキューブを一生懸命にやる(彼は色を判別できない。白と黒しかない世界の住人だから)その姿に萌えた!
友達になりたい。
再会を待つことにしよう。


劇場(109シネマズ湘南・IMAX3D字幕)にて