真田ピロシキ

スパイダーマン:スパイダーバースの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

3.5
まだアメリカンコミックヒーローが好きだった頃に同名の漫画を読んだ事があったが、使い捨てスパイダーマンを沢山出すのが好かず、東映のアレみたいに出オチのような展開するのも面白くなかった。今となっては並行世界のスパイダーマンが次々という企画がまず悪しきキャラクタービジネスと思えて期待してなかったんだけど、100円だからと見てみたら漫画とは全然違っててなかなか楽しい。

このアニメでは黒人スパイダーマン マイルス・モラレスのオリジンストーリーとなっている。有名であるが内容は全然知らなかったため正直ピーター・パーカーの物語に飽きてる事もあってそれだけで興味が惹かれる。蜘蛛に噛まれてからやる事がピーターのそれと酷似していてもキャラが違うだけで結構新鮮。それとマイルスの人種を反映して音楽全般がヒップホップな点が印象的。敵もキングピンやグリーンゴブリンなどお馴染みの面子に加えて正体が驚きのデッドプールを暗くしたみたいな奴やまさかのドック・オクのようによく知らないキャラも出てくるので既視感を覚えるようになったスパイダーマンの映像化作品のスパイスと感じた。まあドック・オクは漫画で数少ないお気に入りだったスーペリアスパイダーマンの方が嬉しかったんだけど尺とか考えるとまず無理だろうしね。

新人スパイダーマンであるマイルスの成長譚であるがもう1人大事なキャラクターがいる。並行世界から呼び出された中年のピーター・パーカー。最初は元の世界ではMJと離婚してたりで意欲を失ったうだつの上がらないおじさんだったのが不承不承マイルスと共に行動していくと、マイルスの成長と共にヒーローとして人として復活していくのがアツい。このピーターの存在は映画館に子供と一緒に見に来るような父親世代に対して「もう一度誰かのヒーローになれる」と発しているのかもしれない。誰だってヒーローになれるは黒人のマイルスや女性のグウェンにも表されるテーマでアメリカンコミックヒーローのトレンドと言える。豚だってヒーローになれるのだ(笑)

アニメーションは各スパイダーマン毎にタッチが違ったり吹き出しなどのコミック演出など非常に情報量が多く飽きない。日本アニメやディズニーピクサー、ドリームワークスでも見られないので新鮮な体験になった。ただアメリカンヒーローコミック原作以外ではやらなさそうなので自分は今後あまり目にする事がなさそうなんだよなあ。