ゴミ箱島代表ひもる

僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄(ヒーロー)~のゴミ箱島代表ひもるのレビュー・感想・評価

3.8
まず、初見さんの問題について。アニメの劇場版はジャンプアニメに限らず、毎年公開される『ポケットモンスター』や『名探偵コナン』などの子供向けの映画でない限り、基本的には原作ファン向けのファンサービス映画であり、普通は初見さんには厳しい。今作は初見さんでも問題なく楽しめて、また、初見さんが原作やアニメに入る入門としては最適な作品でもある。
最初のオールマイトの若い時のエピソードはアクションがいっぱいで、最初の掴みとしては十分。そこから、主人公の緑谷出久の背景を簡単に説明してくれるから、『僕のヒーローアカデミア』とはどんな作品なのかがわかりやすく、初見さんもしっかりと世界観に入ることができる。主要なキャラクターも日常会話の中で紹介されているから覚えやすい。
次に良い点は、学園バトルものにしては珍しく、緑谷出久達がまだ経験の浅い学生であることを強調していたこと。彼らはまだ修行中であり、ヴィランと戦う準備はできていない。だからこそ、彼らはヴィランとの関わりを避け、自分たちにできること、ベテランヒーローの解放に専念しているのは彼らの身の丈にあった丁度いい活躍だった。
ただ、ちょっと残念なことがあって、途中で緑谷出久達を追いかけてきたヴィランと、爆豪勝己、切島鋭児郎、轟焦凍が戦うことになるけど、避けるはずだった戦闘をすぐに始めちゃうのはまあいいとしても、そこでヴィランを倒せちゃうのはダメだと思う。あくまで時間を稼ぐことに全力を注ぎ、その後でプロヒーローを登場させて倒した方がよい。今回は敵との交戦を避けるスタンスが少しぼやけている気がする。
とはいえ、どのキャラクターにも個性を生かした見せ場があり、バトルシーンが素晴らしい。とりわけ、ラスボスとの最後のバトルは最高。緑谷出久とオールマイトの共闘はめちゃくちゃ興奮する。
何より、このクライマックスだけでなく、作品全体がヒーローの存在の重要性を明確に描けている。ヒーローとは、助けを求めている人のために自分を犠牲にすることができる人だと思う。能力の有無にかかわらず、他人のために自分を犠牲にすることがヒーローがヒーローと呼ばれる理由だと思う。
さらに良かったのは、オールマイトのキャラクターの本質がしっかり描かれていること。オールマイトはDCのスーパーマンのような存在で、彼の存在そのものが人々や他のヒーローに希望を与える。だから彼は助けに来るだけで他のヒーローを鼓舞することができる。 「私が来た!」というセリフも人々に希望を与えることができるという意味だと思う。つまり、真のヒーローとは、人を助けるだけでなく、人に希望を与え、心を強くすることができる人なんだと思う。
このようにヒーローものやジャンプ映画として非常に良い部分がたくさんある作品だと思う。けど、それが映画としてどうかは別の問題。欠点の多い映画だとも思う。
まず第一に、前半が非常に退屈。前半は『僕のヒーローアカデミア』の作品やキャラクターの説明、舞台となるI.アイランドの解説がほとんどで、ストーリー自体は全く動いていない。そのせいでテンポが悪くてつまらない。初見さんに気を配りすぎな気がする。また、緑谷出久の同級生全員が別々の理由で島に来る必要はなかったと思う。そのせいで、一人一人の理由を説明するのに余分な時間がかかっていた。島を観光する過程で、登場人物を紹介できたと思う。
観光の過程で出てきたヒーローアイテムの中にはかなり面白そうなものもあったけど、後で使われなかったのは残念。全体的に個性を研究している人工島であるという設定が活かされていないと感じる。
じゃあ、後半は文句なしで面白いかと言われると、そうでもない。後半でもテンポが少し悪い気がした。緑谷出久達がタワーを登って行くシーンも少しテンポを上げて欲しかった。
あとは、メインヴィランのキャラクターが弱い。背景や信念は特になく、ただのやられ役。
また、細かい部分ではあるけど、終盤であるキャラクターの裏切りが明らかになるけ、もう少し前振りがあった方が良かったし、サミュエル・エイブラハムにあの後何が起こったのかも見せて欲しいと思った。
この作品のゲストキャラクターであるメリッサ・シールドと緑谷出久の関係をもう少し深く掘り下げてほしいとも思った。メリッサ・シールドは緑谷出久にとってもしかしたらそうなっていたかもしれないもう一つの可能​​性だったので、特にそこら辺について何もなかったのは残念。二人の回想シーンを何度も入れるのも良くない。
作画も少し微妙で、戦闘シーンは完璧な作画だけど、他のシーンでは微妙な作画崩壊があった。